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EFSA発表 遺伝子組み換えナタネのこぼれ落ちに、固有の環境リスクなし

 EUのEFSA(欧州食品安全機関)は、GM(遺伝子組み換え)ナタネのこぼれ落ちの環境リスクの懸念について、遺伝子組み換え種子固有の環境リスクは認められないと結論づけました。これはEFSAのGM UnitのYann Devos博士らが、2011年4月末に『Transgenic Research』に論文を発表し、環境影響の科学的証拠に基づいて再検討を行って評価をまとめたものです。

 EUでは現在、除草剤耐性の遺伝子組み換えナタネの輸入と食品利用が認められていますが、商業栽培は行われていません。これらが輸入の際にこぼれ落ちて、除草剤耐性遺伝子が流出することによって環境や経済に問題を引き起こすのではないかという懸念がありました。この懸念について、EFSAでは再検討が行われ、今回論文の発表が行われました。
 この中で、もし輸送中に遺伝子組み換えナタネがこぼれ落ちたとしても、農業栽培地以外の場所で特定の除草剤が用いられることはないので、除草剤耐性の特性が優越化することはないとしています。したがって従来の非組み換え品種がこぼれ落ちても、野生化してはびこることのリスクは同程度、としています。
 また遺伝子が流出する懸念は主に港湾区域に限定されますが、そこでもし野生化をしても影響は低いもので、そのリスクは注意深い管理によって最小に抑えることができます。さらに経済の懸念についても、こぼれ落ちによって野生化した植物が栽培作物に混入する懸念は極めて低く、EUの0.9%のしきい値に影響を与えることはないとしています。

 これらの科学的な研究をもとに、今回発表された論文では、「遺伝子組み換えナタネ種子の輸送は、在来種のナタネ種子を輸送する以上の環境へのリスクはない」と結論づけることができるとしました。また、EUにおいては、ナタネのこぼれ落ちのリスクが輸入を阻む理由とはならないとしています。

 なお、日本ではカルタヘナ法によって遺伝子組み換え農作物がこぼれ落ちて環境に影響が与えることが無いよう事前に審査が行われています。また、農林水産省は、平成18年度から、遺伝子組み換え植物がその生育範囲を拡大したり、遺伝子組み換え植物に組み込まれている遺伝子が交雑可能な近縁種に広がったりしていないかを知るために、輸入港の周辺地域において遺伝子組み換えセイヨウナタネの生育状況や、その近縁種(カラシナ、在来ナタネ)との交雑状況について調査を行っています。毎年行われている調査の結果、遺伝子組み換えナタネの生育範囲の拡大は見られず、カラシナ又は在来ナタネと遺伝子組み換えセイヨウナタネとの交雑体も見つかりませんでした。

参考webサイト
*「Transgenic Research」Feral genetically modified herbicide tolerant oilseed rape from seed import spills: are concerns scientifically justified?
http://www.springerlink.com/content/v452101772145327/

*農林水産省発表「平成21年度遺伝子組み換え植物実態調査」の結果について
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/110107.html

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