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遺伝子組み換えで多弁咲きのシクラメンの開発に成功

北興化学工業株式会社開発研究所のバイオサイエンス研究部植物バイオチームと(独)産業技術総合研究所ゲノムファクトリー研究部門による研究グループは共同で、遺伝子組み換え技術(CRES-T法*1)を利用した多弁咲きのシクラメンの開発に成功しました。

シクラメンは冬季の代表的な鉢花で、鉢花のなかでは国内の作付面積、出荷量が最も多く主要な花きの1つです。シクラメンの花弁数は本来5枚で、バラやカーネーションのように形の「バラ咲き」をする品種を作り出すには突然変異を利用するしかなく、多弁咲きのシクラメンの作成は困難とされてきました。

花の形は花弁、雄しべ、雌しべ、がく片などの花器官によって形作られています。花器官は、転写因子と呼ばれる遺伝子によって制御されていることが知られており、中でも雄しべや雌しべの形成にかかわるAGAMOUS(アガマス)と呼ばれる転写因子の発現を制御することで、花の形の改良が可能であると考えられてきました。

研究グループは、まずシクラメンの転写因子の解析を行い、2種類のAGAMAOUS遺伝子を取得しました。CRES-T法という手法を用いて、これらの遺伝子組み換えシクラメンを作り出したところ、雄しべや雌しべの発現の変わりに花弁が形成されて、花弁が10枚になった八重咲きシクラメンや、雄しべや雌しべがなく花弁が繰り返し現れる多弁咲きシクラメンを作ることに成功しました。また、雄しべが花弁となることで、花粉の飛散が抑えられました。

この成果により、バラ咲き品種という新たな形質が生み出され、今後はピンク1色である花色の種類も増やしていく予定としています。そして、生物多様性影響評価試験*2を行った後、多色の多弁咲きシクラメンの製品化を目指しています。

*1CRES-T法
目的とする遺伝子に特定の配列を付加することで、遺伝子の働きを抑制する遺伝子組み換えの技法。従来の方法よりも効率的に機能することから注目されている。

*2生物多様性影響評価試験
遺伝子組み換え技術によって新たに作成された生物が、日本の野生動植物等へ影響を及ぼす恐れがあるかどうか明らかにする試験。野生生物との競合における優位性、有害物質の生産性、交雑性などの項目について試験を行い、その内容の妥当性を学識経験者が科学的見地から検討する。

北興化学工業株式会社
http://www.hokkochem.co.jp/topics/10-03-16_cyclamen.html
独立行政法人 産業技術総合研究所
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100316/pr20100316.html

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