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複数の調査から見えるEU消費者の遺伝子組み換え食品に対する意識
EUのGMO Compassは、遺伝子組み換え食品に対するEUの消費者意識に関する複数の調査を総括し、EUの市場においても遺伝子組み換え食品が広く流通する可能性があることを示唆しました。欧州委員会は、消費者の傾向を把握するための世論調査を定期的に行っています。この調査によると、EUの消費者の多くは、農業と食品生産における遺伝子技術の利用について懐疑的でしたが、その数は1999年から減少しています。1999年は回答者の10%しか遺伝子技術をよいものと考えていませんでしたが、2005年はおよそ30%が肯定的にとらえていました。また、遺伝子組み換え食品を受け入れるEUの消費者はここ数年で一貫して右肩上がりとなっています(2002年は21%、2005年は27%が肯定)。ただし、国ごとの意見のばらつきは大きく、例えば、チェコ共和国では46%が肯定したのに対して、ルクセンブルグでは13%でした。イギリスのGrocery Distributionの2008年の調査では、回答者の多く(58%)が遺伝子組み換え食品に関して中立的であるか、明確な意見を持っていませんでした。また、48%が自分たちの知識が限定的であると答えており、Grocery Distributionは、ほとんどのイギリス国民は遺伝子組み換え食品への理解が十分ではないと推察しています。
英国食品安全管理局の2008年の調査から、消費者の遺伝子組み換え食品への関心は年々小さくなっていることが分かりました。調査を始めた2001年ではおよそ40%が関心を持っていましたが、2004年は35%、2008年は26%に減少しました。食品中の塩分(50%)や脂肪(40%)、糖(39%)への関心はより高いものでした。
EUの世論調査から、遺伝子組み換え作物の特定の利点に関して質問をすると、その支持率は明らかに高くなることが分かりました。2005年には、回答者の51%が遺伝子組み換え食品が従来の食品よりも農薬の使用が少ない場合に購入すると答えました。また、Grocery Distributionの調査によると、遺伝子技術は食料不足の解決策になるかという問いに、13%の回答者がならないと答えたのに対して、52%がなると答え、気候変動と植物の病害の解決策になるかについては、12%がならないと答えたのに対して、47%がなると答えました。
調査における消費者の回答が実際の行動と剥離することは多くありますが、欧州議会は、この問題について2006年から2007年にかけて調査プロジェクト‘消費者の選択’を行いました。当時、遺伝子組み換え食品が流通していた国(チェコ共和国、オランダ、ポーランド、スペイン)で、遺伝子組み換え食品を避けていたのは消費者の20%でした。それゆえに、多くのEUの国において、遺伝子組み換え食品は売られていれば買われるだろうと述べられました。Grocery Distributionの2008年の調査でも、回答者の21%が買い物の際、遺伝子組み換えでないか確認するために表示を見ると答えたのに対して、半数以上(53%)が意識しないと答えました。
2007年にニュージーランドのUniversity of Otago Marketing Commerceで行われた別の研究では、より明らかな結果が得られました。研究者は、EUの5ヶ国で、3つの異なる表示(有機栽培、従来の農法、無農薬の遺伝子組み換え)をつけた果物を販売しました。売店には合計2,736名が訪れ、研究者が最もふさわしいと思った価格設定において(有機栽培は15%高く、無農薬の遺伝子組み換えは15%安い)、スウェーデンとドイツでは遺伝子組み換えのものが最も売れ、イギリスとフランスでもシェアの30%以上を占めました。この結果により、遺伝子組み換え食品は現在普通に流通している食品よりもはるかに売れる可能性があることが再び示されました。
これらの調査により、遺伝子組み換え食品はヨーロッパの市場に広く流通する可能性を持っていることが示されました。前EU貿易長官のPeter Mandelson氏は、「一般消費者の危惧は誤ったものかもしれないが、それらは考慮するべきことである。我々は、この問題に適切に対処しなければならない。そうすれば消費者は遺伝子組み換え食品の利点に気付くだろう」と述べました。