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(独)森林総合研究所と理化学研究所、スギの雄花の完全長cDNAの大規模収集に成功

(独)森林総合研究所と理化学研究所は、森林総合研究所のプロジェクト「ポプラ等樹木の完全長cDNA塩基配列情報の充実」の一環として、スギの雄花で発現する完全長cDNAを同定し機能別に分類することに成功しました。その成果は日本DNAバンク(DDBJ)に登録されるとともに、森林総合研究所が提供する森林生物遺伝子データベース(Forest Gen)として公開されました。樹木の完全長cDNAが大規模収集された事例はポプラに次いで2番目で、針葉樹としては世界で初めてのことです。
スギ花粉症は日本において深刻な社会問題となっています。そこで、林業分野ではスギ花粉発生源の減少をスギ花粉症対策の基本と位置付けて、都市部に影響を及ぼす花粉発生源の特定や花粉抑制技術の開発、花粉の少ないスギ品種の開発などに取り組んできました。今後は遺伝子組み換え技術を用いた花粉制御技術や花粉形成抑制技術の開発、新品種作出の効率を高めるDNAマーカー開発等の研究が注目されており、スギの雄花や花粉の発達過程で働く遺伝子の詳細な情報が不可欠とされています。

1つのタンパク質を合成するために必要な全ての情報を持ったDNAの完全体は「完全長cDNA」と呼ばれており、遺伝子の機能解析や遺伝子組み換え体の作出に有用とされています。今回、両研究所がスギの各発達段階の雄花から1万463種類の完全長cDNA(遺伝子)を同定して機能別に分類したところ、既知の花粉アレルゲンと似た遺伝子が180種類発見されました。全体の構成では、タンパク質の翻訳後の修飾や代謝(8.9%)、細胞内シグナル伝達(7.1%)、転写因子(4.3%)、未知の機能を司る遺伝子(34.8%)等の結果が得られました。

これらの成果は、未知のスギ花粉アレルゲンの発見につながるだけでなく針葉樹での新たな遺伝子の探索にも役立ち、スギ花粉症対策や新たなスギ品種の開発につながるものと期待されています。また、森林総合研究所が提供する森林生物遺伝子データベースとして公開され、誰でも自由に利用することが可能です。

森林総合研究所ホームページ
http://ss.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/Press-release/2008/forestgen20080909.html

森林生物遺伝子データベース:Forest Gen
http://forestgen.ffpri.affrc.go.jp/ja/index.html

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