GMO Answers

質問

質問者 Transparency (カリフォルニア州、ウォールナットクリーク)

Natural News.comは、米国の食品医薬品局(FDA)に相当するヨーロッパの欧州食品安全機関(EFSA)は、従来の方針から方向転換し、今や、セラリーニ氏が採用した「研究手法は、実際には、現在認められている手法よりも強固なものである。よって、EFSAは、セラリーニ氏の手法の多くを採り入れ、それらを現代的食品の安全性研究の正式基準として採用している。これはセラリーニ教授の研究にとっての勝利であるだけでなく、企業宣伝に惑わされず真実を追求する独立研究グループにとっての勝利でもある。」と伝えています。 http://www.naturalnews.com/041728_food_safety_guidelines_Seralini_study_GM_corn.html. あなたがたは、このEUの劇的な方向転換と、セラリーニ氏の研究手法が正当化されたことについて、どのように受け止めていますか? 特に、GMOがラットの腫瘍発生の原因であることを示したセラリーニ氏の研究結果を受け、どのように対応するのでしょうか?

回答

次のCropGen.orgからの記事は、EFSAのガイドラインについて、ロンドン大学キングス・カレッジのヴィヴィアン・モーゼス氏、および、カリフォルニア大学デービス校のアリソン・ヴァン・イーネナム氏が示した見解を要約したものです。

以下は、2013812日付の「The Way it’s done」からの引用です (全文はこのサイトでご覧ください:http://www.cropgen.org./article_492.html

・・・最近ある団体が、欧州食品安全機関(EFSA)が出したガイドラインを使って、新たな告発を試みました。すなわち、EFSAは、NK603トウモロコシ(4)の深刻な健康影響を認めた長期GM給餌試験を、認証しているではないか、というものです。 告発には9点が記されていますが、特に以下が主要な点です。

2. EFSAは、90日間のGM給餌試験に用いられた系統のラットを、より長期間の試験でも使用すべきと述べている - これは、セラリーニ氏がSprague-Dawley SD)ラットを用いたことの正当性を立証するものである、何故ならば、このラットは、モンサント社が同じトウモロコシで行った90日間の給餌試験で用いられているからだ。

3. EFSAは、動物には自由に餌が摂取できる(不断給餌)ようにすべきであるとしている。セラリーニ氏の試験でも、給餌はそのように行われたが、批評家たちは、その方法では、個々の餌や水の摂取量を測ることが出来ないとして、苦言を呈している。

7. EFSAは、慢性毒性試験には、一群につき、雄雌それぞれ最低10匹を用いることを推奨している。セラリーニ氏の試験でも、EFSAの推奨する10匹が供試されている。

これらの問題に精通しているアリソン・ヴァン・イーネナム氏は、EFSAのガイドラインは、OECDのガイドラインに沿ったものだと述べています。OECDのガイドラインには、「試験には、一般的な実験室系統の若い健康な成体動物を、用いなければならない。 慢性毒性と発がん性を同時に調べる試験では、より短い期間の予備毒性試験に用いられたものと同一系統・ソースの動物を使用せねばならない。 ただし、当該系統・ソースの動物が、長期試験に求められる一般的な生存率基準を満たさないことが知られている場合には(ガイダンス文書116番参照)、長期試験に耐えうる生存率を有した系統の動物の使用を検討せねばならない。」と規定されています。

さらに、ヴァン・イーネナム博士は、ガイダンス文書116(7)番の規定の主旨は、「留意すべきは、発がん性試験に適した系統のラットを選択する場合、一定の推奨試験期間にわたり、生存する可能性のある動物を選択することである(セクション3.3.2を参照)」、と述べています。ブリトン氏らの研究(2004年)では、三種類の系統のラット(Harlan Hsd:Sprague-Dawley:SD, Harlan Wistar Hsd:BrlHan:WIST, Charles River Cr:CD)の内、104週間の発がん性試験期間を通じて、Harlan Wistar系統の生存個体数が、他の系統よりもはるかに多かった、と報告されています。著者らは、生存率の高さは、体重や餌の摂取とは無関係であり、自然な病理プロフィールに反映されていたとしています。他の著者らは、この現象は肥満や遺伝的感受性の組み合わせに起因しており、長期発がん性生物検定において、生存期間の延長を図るには、食事制限が有効である、と提言しています(Keenan, 1996年)。

更に、ガイダンス文書には、次のように記されています。「慢性毒性や発がん性試験における給餌方法で留意すべきは、不断給餌である場合は、試験結果に一定の影響があることである。従来、実験動物の餌の評価基準は、最大限の成長と繁殖をもたらすこと、に置かれてきた(NRC1995年)。しかしながら、多くの研究報告は、実験動物のカロリー摂取を制限することで、寿命や変性疾患の発症及び程度、腫瘍の発生及び発生率に、有益な効果がもたらされる可能性があることを示している(Weindruch and Walford, 1988; Yu, 1994; Keenan et al. 1997)。これらの研究結果に基づけば、実験動物の成長と繁殖を最大化するために、不断給餌を行うことは、長期毒性や老化研究の目的に照らし、矛盾があるように思われる(NRC 1995年)。不断給餌による餌の過剰摂取は、現在の齧歯動物を用いた生物検定において、結果に影響を与える最大かつ無制御な変動要因であると、一般的には考えられており、特に、Sprague-Dawley系統のラットでは、餌の摂取量、最終的な成獣の体重、2年の試験期間における生存率の間の相関関係に、極めて大きな影響を及ぼす(Keenan et al., 1997)。しかしながら、国内や国際的な毒性試験のガイドラインに、給餌制限を導入するには、かなりの年数を要すると考えられる。これは、例えば、がんが遅発性の場合、供試化学物質の発がん性を上手く検知することが出来ず、発がん性試験の感度の低下につながってしまう懸念があること、また、歴史的に蓄積された膨大なデータベースは、不断給餌試験によるものであること、などの理由による(Meyer et al., 2003)。生存率における供試ラットの種類や系統間の相違は、3.3章で詳述する。」

以上のごとく、ヴァン・イーネナム博士は、EFSAの文書の言わんとする所は、長期(104週)の給餌試験には、Sprague-Dawley系統のラットではなく、Harlan Wistar系統のラットを使用することが望ましいこと、また、試験には、処理群あたり、雌雄それぞれ50匹を用いるべきこと、Sprague-Dawley 系統のラットを使用する場合には、生存率が低いことを踏まえ、最低でも処理群あたり、雌雄それぞれ65匹を用いるべきこと、そして、不断給餌は、がんの作用因子として極めて重要であることが知られており、これはSprague-Dawley系統のラットの2年間の生存率を減少させる、という点にあると結論しています。

よって、ヴァン・イーネナム博士は、セラリーニ氏の研究手法がEFSAによって正当化されたというような主張は、まったく理解できないとしています。

回答者 ヴィヴィアン・モーゼス

回答者

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ヴィヴィアン・モーゼス

Vivian Moses

ロンドン大学キングス・カレッジ、糖尿病・栄養科学学部、GM作物・食品の共編者

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