GMO Answers
質問
自然界には、異なる活性を示すBtタンパクの変種が揃っていることを考えれば、遺伝子組み換え農業システムにおけるBt抵抗性害虫の出現抑制に、このような潜在的進化能力を活用することができるのではないでしょうか?つまり、これまでに商業化された導入Bt遺伝子は、まったく同一のBtタンパクをコード化したものなのでしょうか?それとも、異なる活性を発現するような変種がいくつか使われ、特定のBtへの耐性発達を抑制するよう、循環しながら異なる活性を示すようなものがあるのでしょうか?また、これに関連した質問ですが、変種の導入Bt遺伝子は、すべて新種と見做され、それぞれに規制の評価手続きを踏む必要があるのでしょうか?
回答
今日の遺伝子組み換え作物には、バチルス・チューリンゲンシス(Bt)由来のタンパク質(Btタンパク質)でも、異なる種類のタンパク質を産生するものがいくつかあります。これらのBtタンパク質には、葉や花、穀粒を加害する鱗翅目害虫(アワノメイガ、アメリカタバコガなど)からの被害を防ぐものもありますし、また、根茎を加害する鞘翅目害虫(ネキリムシ)からの被害を防ぐものもあります。ご指摘の通り、業界では、これら二つのグループにおいて、害虫の適応を遅らせ、あるいは適応を抑制するために、様々な特定タンパク質を利用しています。 例えば、Cry1FaとCry2Ab Btタンパク質は、ともにアメイカタバコガからの加害を防ぎ、いずれか一方に対して害虫が耐性を示したとしても、他方で抑制することができます。実際、新しいBt作物の多くは、複数のBtタンパク質を産生しており、これらのタンパク質がともに耐性の発達を抑えているのです。 近い将来、さらに耐性発達の脅威を和らげるような、新たな害虫抵抗性形質をもつ、遺伝子組み換え作物が生み出されることでしょう。今後もBtは新たな形質開発に有用な材料を提供すると思われますが、一方、RNA干渉のような新手法も開発されつつあります。
二番目の質問についてですが、世界中の規制当局は、ヒトの健康と環境への安全性という観点から、それぞれのBtタンパク質を、個別に審査しています。 極めて近縁のタンパク質であっても、例えば、アミノ酸配列がほんの僅か異なるものであっても、個別に評価されるのです。さらに、既存のBtタンパク質の安全性も、新種の作物に導入される場合や、同一作物であってもの遺伝子の異なる位置に再び挿入される場合には、改めて評価されるのです。 とは言え、私たちは、Btタンパク質の安全性一般について、膨大な知識基盤を築いてきました。これにより、既存や新種のBtタンパク質の評価を、より簡単に、より早く、そしてより確実に行うことができるとでしょう。
回答者 ニコラス・ストーラー博士回答者
ニコラス・ストーラー博士
Dr. Nicholas Storer
ダウ・アグロサイエンス社、科学、バイオテクノロジー規制及び政府関係グループ、グローバル・リーダー