GMO Answers

質問

質問者 snlgmo(ワシントンDC)

食品に含まれる遺伝子はどのようなプロセスで改変されているのか詳しく説明してください。

回答

野生では、遺伝子の転移は、同じ生物種内でも、異なる生物種の間でも、伝統的な繁殖(育種)あるいは伝統的ではない方法を通して、ごく一般的に起こっています。ウィルスやバクテリアでは常に遺伝子の転移が起こっていますし、植物や動物も同様です。例えば、ヒトのDNAは、ウィルスの遺伝子だらけです。

今をさかのぼる1万年から2万年前、人類が農業を始めたとき、彼らは、食用に最も適した野生植物からタネをとり、「作物」をつくるために、そのタネを蒔きました。太古の農家は、翌年の作物からタネをとるために、彼らにとって最も好ましい植物を選びました。彼らは、生長の早いものや収量の多いもの、タネが沢山とれるもの、より味のよい果実、より大きな植物、昆虫や他の害獣に食べられにくいもの、病気に強いもの、その他の好ましい形質をもつものを探し求めました。彼らにとって最も重要な形質の一つは、食べても安全なものでした。彼らは、やがて、同じ種類の植物を人工的に交配することで、また1700年代には、異なる種類の植物を他家受粉させることで、植物の特性を改良出来ることを学びました。当時の農家は、当然ながら、遺伝子については何も知りませんでした。しかしながら、彼らは、実際には、植物の遺伝子の組成を変化させていたのです。

20世紀に入ると、科学者たちは、トウモロコシで、「ハイブリット形成(雑種形成)」という、今までにない新たな育種方法を試みるようになりました。この方法では、先ず「同系交配(inbred)」 系統(遺伝的に純粋な系統で、望ましい特徴が以降の各世代に引き継がれる)のトウモロコシを作り、その後、より良く、より活力のある系統を作りだすために、他の純粋系統と交配します。これにより、トウモロコシ市場ではハイブリッドが主流となり、この技術は他の作物にも応用されました。米国では、トウモロコシの栽培面積の95%がハイブリッド種となっており、80年前にくらべ、3%ほど少ない農地で、6倍もの生産が可能となったのです。

ハイブリッドは種子産業にとって最適でした。何故なら、彼らは、親となる同系交配系統の品種を所有していましたし、彼らだけが固有のハイブリットを生産することができたからです。すなわち、農家は、毎年、種子会社から、これらの改良種子を求めることになったからです。

また、1940年代には、科学者たちは、植物の遺伝子組成を、化学薬品やX線、他の放射線に暴露することで、改変することができることを学びました。これは、「突然変異育種」と呼ばれ、この方法により、主要な作物で多くの品種が生み出されました。

これらの手法を含め多くの手法は「伝統的、あるいは従来育種」と呼ばれていますが、このような方法による遺伝子改変は、二つの生物のゲノムが交差する際に大量の遺伝子が交換され、あるいは突然変異生成の際には、遺伝子改変が無作為に行われるため、不確実性や予測不可能性が極めて高いといえます。あらゆる植物や動物に存在する可動性DNAもまた、混合されます。このような転移因子は、ゲノムの内外に飛び移り、ゲノムを絶え間なく変化させます。

遺伝子組み換えのプロセスは、遺伝子改変の方法としては、より正確です。望ましい形質を得るには、たった一つ、あるいは僅かな遺伝子のみが必要なだけで、これらが一方の生物から他方に移ります。従来育種と遺伝子組み換え技術の違いは、米国食品医薬品局の図で上手く説明されています(下図)。一般には、遺伝子組み換え技術は、遺伝子改変と同義語となっており、遺伝子組み換え技術により作られた生物は、遺伝子組み換え生物あるいはGMOと呼ばれています。専門用語では、「トランスジェニック」と呼ばれています。

過去40年来、科学者たちは、DNAを切り貼りし、新たな構成とすることが出来るようになりました。トランスジェニック(遺伝子組み換え)植物は、科学者たちが、興味のある遺伝子を同定、増殖し、植物と自然に遺伝子を交換することができるバクテリアの一種「アグロバクテリウム」に挿入することから始まります。アグロバクテリウムの実験室株(通常、単に「アグロ」と呼ばれる)は、DNAを植物細胞に移植することができます。科学者たちは、興味のある遺伝子を「アグロ」に入れ込み、植物組織を使って培養します。「アグロ」は、DNAを一つの細胞の中に移し入れ、その後、DNAはゲノムの中に統合されます。この一つの細胞は、培地に移され、そこでカルスと呼ばれる塊(遺伝子組み換え細胞の小さな塊)に分化します。

植物細胞は、植物ホルモンの働きに基づいて生長、分化します。カルスを、様々なホルモンを組み合わせた培地に置くと、最終的に植物体を構成することになる器官や胚などの組織的な細胞構造が生まれます。この元となった細胞に目的の遺伝子が含まれていれば、新たな植物の全ての細胞に、その遺伝子が含まれることになります。

簡単に言えば、以上が遺伝子組み換えのプロセスです。どの研究室でも、多くの品種の場合、プロセスは比較的簡単です。現在では、殆どの研究室が、これらのプロセスを自身で行うことに拘ってはいません。代わりに、幾つかの専門企業や大学のサービス部門に委託して、トランスジェニックを作っています。基本的に、望みの遺伝子を様々な農業用作物に導入することは、難しくありません。その先は、組み込まれた遺伝子が、植物がかつて行ったことのないことを指令します、天然に存在する物質をより多く作ったり、ある遺伝子のスイッチを切ったりすることなどです。これらの全てが、プロセスによる貴重な成果です。

回答者 ケビン・フォルタ

回答者

ケビン・フォルタ

Kevin Folta

フロリダ大学、園芸学科、教授兼学科長

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