GMO Answers
質問
樹木を遺伝子組み換えする際の課題は何ですか?
回答
まず、遺伝子組み換え技術には、従来の品種改良技術と比較した場合、多くのベネフィットがあります。これは主に、樹木に加える改変がより少なくて済むこと、そして、私たちがそれら改変の内容をより詳しく理解していること、などの事実に依っています。しかし、あなたからの質問は、樹木の遺伝子組み換えに関する(ベネフィットではなく)課題についてでしたね。一つ目の課題は、効果的な形質転換手法の開発です。すなわち、樹木は種類によって性質が異なるため、個々の樹種に合うように手法の最適化が必要になります。アメリカグリに適した遺伝子組み換え手法の開発には16年かかりましたが、私たちは、ようやくそれを手に入れることができ、現在では、一年もかからずにアメリカグリの遺伝子組み換えが行えるようになりました。従来の品種改良に比べると、はるかに短い期間で済むようになったのです。この様に、新たな樹種の遺伝子組み換えに取り組む場合、まず初めに手法の開発と言う課題が立ちはだかります。
そしてもう一つの課題は、おそらく最大の課題だと思いますが、米国の現行の規制システムが、遺伝子組み換え樹木を効率的に評価するために作られたものではないということです。このシステムはもともと、化学品を規制するために作られたもので、後に遺伝子組み換え植物の評価にも適用されるようになりましたが、当然ながらこれらは(化学品と植物では)大きく異なります。全ての遺伝子組み換え樹木は、環境保護局(EPA)や米国農務省(USDA)により厳しく規制され、更に、食品として利用される場合には、米国食品医薬品局(FDA)による規制の対象ともなります。しかし、同じ樹木形質が、交雑育種、放射線照射あるいは化学物質を用いた突然変異育種、細胞融合、組織培養ソマクローン変異などの方法で作られた場合には、規制の対象となりません。これは一貫性を欠く扱いであり問題です、何故なら、(このような規制により)遺伝子組み換え樹木の開発には、数年の年月と何百万ドルもの費用負担が付加されるからです。しかしながら、従来の品種改良で開発された樹木に比べ、遺伝子組み換え技術で開発された樹木については、より多くの知見が得られることは、良い点です。
回答者 ウィリアム・パウウェル回答者
ウィリアム・パウウェル
William Powell
ニューヨーク州立大学、環境科学森林学カレッジ、森林バイオテクノロジー・カウンセル、専攻長、教授