GMO Answers
質問
私たちは、何千年も前から有機食品を安全に食べてきているのに、僅か30年の歴史しかない遺伝子組み換え食品を選ぶ理由はありますか?
回答
確かに、遺伝子組み換え食品が「人が食べても安全である」と認められるようになったのは数十年前のことです。これに加え、以下の点についても考えながら、今回の質問にお答えしたいと思います。
最初に指摘したいのは、人類は、何万年も前から、農作物の改良を繰り返し行ってきているという点です。農作物を栽培化する過程では、人間の食料としてより有益である遺伝形質の選抜が繰り返されてきました。これが従来型の育種法です。遺伝子組み換え技術は、従来型の育種法に比べ、正確に、迅速に、かつ効率的にこのゴールを達成することを可能にします。
第二点は、遺伝子組み換え作物の市場への供給が承認されるまでには、様々な試験が行われているという点です。従来の育種法や有機栽培による作物に対しては、この様な安全性試験は行われません。遺伝子組み換え作物の開発期間中に、公的基準に適合する独立した第三者研究機関により、政府の指定する手順に沿った大規模な安全性試験が実施されます。この試験の結果、食の安全に関する懸念が少しでも認められた場合には、法律に従い、食品医薬品局(FDA)に報告しなければなりません。遺伝子組み換え作物の安全性評価は、飼料としての安全性や、環境に対する安全性についても実施され、それぞれ農務省(USDA)、環境保護省(EPA)により規制されています。
第三点は、私たちの生活が遺伝子組み換え製品なしでは成り立たないという点です。私たちの誰もが、遺伝子組み換え技術を利用して生産された食料や薬剤を利用しているのです。ピーター・H・レイヴェン博士の2013年の論文によれば、「ほぼすべてのビール(ビール酵母)、ほぼすべてのチーズ(キモシン、あるいはレンニンと呼ばれる凝乳作用のある酵素)、ほぼすべてのダイズ製品、約25%の薬剤(インスリンなど)、トウモロコシとスカッシュの大部分、そして、ほぼすべてのパパイヤ」が遺伝子組み換え技術を利用して生産されています。過去20年間にわたり、これらの製品による健康被害は発生していません。そして、繰り返しになりますが、そのような被害の発生を恐れる理由は何もないのです。(さらに詳しいことをお知りになりたい方は、ピーター・H・レイヴェン博士の論文をご参照ください。)
食べ物を選ぶ基準は人それぞれ異なります。そして、その際重視する要素は、栄養や安全だけではありません。しかし、私は科学者として、食品としての安全性は、それぞれの食品の特性や取扱いを踏まえた上で、個別に検討して判断すべきであると考えています。遺伝子組み換え生物を作り出す方法それ自体に本質的な危険性があるわけではないので、どのような方法で作り出されたか、あるいは、食品としての歴史の長さを安全性判断の材料とするべきではありません。
回答者 シャオホワ・ヤン回答者
シャオホワ・ヤン
コーネル大学園芸学科、博士研究員