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質問

質問者 Transparency (カリフォルニア州、ウォルナッツ・クリーク)

批評家たちは、セラリーニの有名な研究でSprague-Dawley(SD)ラットが使われていたことが不適切であると主張していますが、そうであれば、モンサント社が同じSDラットを使って行った2年の発がん性試験も不適切なのではないでしょうか? これはダブル・スタンダードのように思えますが、どうなのでしょう?

回答

簡単にお答えしますと、セラリーニのラットを用いた研究が批判を浴びたのは、用いられたラットがSprague-Dawley(SD)ラットだったから、という理由からではありません。 彼が試験に使ったSDラットの数が、結論を導き出すには適切ではなかったのです。発がん性試験にSDラットを用いることは問題ありません、しかしながら、SDラットは、極めて高い率で、ある種の自然疾患(例えば、乳腺腫瘍)になりやすい(Brix et al., 2005)、という事実を踏まえて、実験計画をたてる必要があるのです。

もう少し詳しく説明しますと、自然疾患はSDラットに特有なものではありません、その他の系統のラットでも、普通、異なる疾患になる割合は高いのです。ですから、ネズミを使った発がん性試験では、十分な数(例えば、統計的分析に耐えられる十分な数)を揃える必要があるのです。これは、まれな種類の腫瘍が、どの程度の頻度で発生したかを確認するためのみならず、処理によって生じた効果を、自然に起こる(あるいは背景にある)一般的な腫瘍の発生と、区別するために欠かせないのです。

極端な例を考えると、分り易いかもしれません:

ある研究者グループが、開腹によらない方法で(例えば超音波を用いて)、ある種のエサが犬の心臓障害を引き起こすか否かを確認するとします。彼らは、先ず試験に用いる犬種を選ばなくてはなりません。キャバリア・キングチャールズ・スパニエル(英国原産の耳が垂れている犬)を選んだとします。この犬種は、凡そ90%の確率で心臓(の僧帽弁)に障害が起こることが知られています。このように高い障害発生率が背景にあるとすれば、与えられたエサによって、犬の僧帽弁障害が増加したか否かを確認するのは非常に困難です。しかしながら、研究者たちは、これを克服するために、2つの方法をとることが出来ます。1番目の方法は、他の犬種を使うこと、すなわち心臓障害の起こる率の低い犬種を用いることです。2番目の方法は、キャバリア・キングチャールズ・スパニエルを用いるとして、もっと多くの数を供試することです。より多くの犬を試験に用いることで、統計分析の信頼性が高まり、たとえ背景に高率の障害発生があるとしても、処理(与えたエサ)による効果の差を識別することができるのです。

これは、従来から投与量の重要性が実証されている毒性学の分野では、極めて大切なことなのです(例えば、毒性物質の量が多ければ多い程、毒性は高くなる)。この問題は、一つには、ある結果がでる確率の低い系統を用いるか(これは事前に判断することが往々にして困難)、あるいは、様々な処理群における差異を、きちんと識別できるよう、試験に使われるラットの数を増やすこと(SDラットを用いたセラリーニの研究にも該当)で解決することができます。

以上に述べた理由の背景には、米国(米国環境庁(EPA)1988、米国食品医薬品局FDA)2006)並びにOECD(1995a)の規制ガイドラインに、ネズミを用いた発がん性試験の実施に際しては、性別・処理群ごとに、最低50匹を使用すること、との規定があるのです。さらに、OECDは、「規制当局は、性別・処理群あたりの供試動物数が少ない試験を、規制プロセスで容認することはない、詳細な生物学的、統計学的評価を行うには十分な数の供試動物が不可欠である」(OECD, 1995b).としています。OECDは、さらに、「SDラットのような生存率の低い系統を用いる場合には、処理の期間を最大化するため、処理群あたりの供試数を増やす必要がある・・・」(Hammond et al., 2013)、と述べています。セラリーニの研究(2012)では、性別・処理群あたり10匹のラットしか使われていません。このように少ない供試数では、慢性試験の終了時に、処理群間の腫瘍発生の違いを調べ、有効な結論を導き出すには無理があります。高齢のSDラットの雌は、乳腺や下垂体腫瘍の自然発生率が高い (EFSA, 2012; Hammond et al., 2013)、という点を考えれば、なおさらです。EFSA (2012) は、セラリーニの報告書(2012)では、結果の考察の部分で、これらの事実が無視されている、と指摘しています。ちなみに、著者らは、結果の考察で、試験で認められた乳腺や下垂体腫瘍は処理によるものだと主張していました。

これらのOECDガイドラインは、毒性学者には良く知られています。以上に述べた情報の全てが公開されていることを考えれば、何故、セラリーニらは、SDラットの自然疾患発生率に関する既存の知識に照らして、彼らの研究結果を論じようとしないのかが分りません。

参考文献:

Brix, A.E., Nyska, A., Haseman, J.K., Sells, D.M., Jokinen, M.P., Walker, N.J., 2005. Incidences of selected lesions in control female Harlan Sprague-Dawley rats from two-year studies performed by the National Toxicology Program. Toxicol. Pathol. 33, 477–483.

US EPA, 1998. Carcinogenicity. Health Effects Test Guidelines OPPTS 870.4200. August 1998.

EFSA, 2012. Statement of EFSA: Review of the Séralini et al. (2012) publication on a 2-year rodent feeding study with glyphosate formulations and GM maize NK603 as published online on 19 September 2012 in Food and Chemical Toxicology. EFSA J. 10, 2910.

FDA, 2006. Carcinogenicity Studies with Rodents. Redbook 2000: C.6. January 2006 (Chapter 4).

OECD, 1995a. Carcinogenicity Studies. OECD Guideline for the Testing of Chemicals, No. 451, adopted 07 September 2009.

OECD, 1995b. Guidance Document 116 on the Conduct and Design of Chronic Toxicity and Carcinogenicity Studies, Supporting Test Guidelines 451, 452 and 453, second ed. OECD Series on Testing and Assessment, No. 116, adopted 13 April 2012.

Hammond, B.G., Goldstein, D.A., Saltmiras, D.A., 2013. Response to original research article, in press, corrected proof, ‘‘Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize’’. Food Chem. Toxicol. 53, 459-464.

Séralini, G.-E., Clair, E., Mesnage, R., Gress, S., Defarge, N., Malatesta, M., Hennequin, D., de Vendômois, J-S., 2012. Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize. Food Chem. Toxicol. 50, 4221-4231.

回答者 マイケル・コッホ

回答者

マイケル・コッホ

Michael Koch,Ph.D.

博士・認定トキシコロジスト、モンサント社、毒性学新技術部門、リーダー

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