GMO Answers

質問

質問者 fezmarie73 (テキサス州、ダラス)

新たなGMO製品の試験や開発の際には、種子や花粉は厳しく管理されていなければいけませんよね。 どのようにして、蜂やその他の昆虫、生物による他家受粉を防いでいるのですか? また、微生物や線虫が管理環境から逃げ出すのをどのように防いでいるのでしょうか? 私は科学者ではありませんが、自分の庭にいるアブラムシからハダニ、菌類まで、あらゆる生物の移動を追跡しており、例えそれらがA地点からB地点まで移動しようとしているとしても分かります。

回答

米国では、新たなGMO作物の圃場試験を行う場合、米農務省(USDA)動植物衛生検査局(APHIS)の一部門であるバイオテクノロジー規制関連事業(BRS)による規制を受けることになります。規制対象のGMO作物を使って圃場試験を行うには、開発者や研究者は、圃場試験の対象ではない類縁植物との他家受粉を最小限に抑えるための試験計画を準備しなくてはなりません。

USDA APHIS BRSは、GMO作物の研究者や製品開発者向けに、米国内で圃場試験に供される最も一般的な作物について、どのように生殖的に隔離すべきかを示した指針を出しています。この指針は、USDA APHIS BRSのウェブサイトに、「遺伝子組み換えされた特定植物の隔離圃場試験における最低限の分離距離」という題名の文書として、掲載されています。このUSDA指針文書の題名が示す通り、遺伝子組み換え植物の花粉が、生殖的に互換性のある植物(受粉する可能性のある植物)に到達するのを抑えるための一般的な方法は、試験圃場を、受粉する可能性のある作物や雑草から、規定された一定の距離をおいて設置することです。この距離は、作物の性質により異なってきます(例えば、花粉の重さ、虫媒受粉の普及状況、花弁の形、自家受粉対自然受粉の割合)。

例えばダイズでは、花粉の形成や開花のタイミング、花弁の形状から、隣接する列の植物に他家受粉する確率は1%以下とされています(キャビネス1966)。他家受粉の確率が低いため、ダイズでは、農作業中の偶発的な機械的混合を防ぐには、非GMOダイズとの隔離距離は、わずか10フィート(約3m)で足りるのです。 ワタの場合は、虫媒による他家花受粉の可能性が高いため、ダイズよりも隔離距離を大きくとる必要があります。ワタの他家受粉の確率は、気候や受粉を媒介する昆虫の種類によって影響を受けます。 隔離距離を10メートルとすることで、他家受粉の確率は1%以下に低下することが分っています(ヴァン・デインズら、2005)。OECDでは、認証済商業用種子(OECD、2008)の栽培に際しては、隔離距離を200メールとることを推奨しており、これは、USDAが規制対象GMO圃場試験に対して課している最低必要条件とも一致しています。

また、ワタのような虫媒受粉作物に適した方法としては、「花粉トラップ」の利用が挙げられます(シンプソンとダンカン、1956)。ワタ作物における「花粉トラップ」とは、規制対象GMOワタの試験圃場を取り囲むように植えられた「ワタの囲い」のことで、GMOワタの植付けと同時期に植え付けます。「ワタの囲い」に用いられるワタは、試験圃場内のGMOワタと同じ時期に成長し開花する種類のものが使われます。規制対象GMO作物の圃場にエサを求めて入り込む花粉の媒介昆虫は、圃場から出る際に、さらなるエサを求めて規制対象ではないワタの囲いに立ち寄り、GMO圃場から運ばれた花粉を、ワタの囲いに残していきます。「花粉トラップ」は、花粉の媒介昆虫にとって、規制対象の試験圃場から出る際の「足ふき」のような役割を果たすのです。

シーズンに一度だけ、それも一定の期間だけ開花する、例えばトウモロコシのような作物では、時間的隔離を行うことで、受粉する可能性のある植物への花粉の拡散を、最小限に留めることができます。つまり、規制対象GMOの試験圃場への植え付けを、付近の受粉する可能性のある作物の植え付けが始まる前、あるいは後の所定の期間内に行うのです。規制対象GMOトウモロコシが花粉を作り出す頃には、付近の全ての規制対象外のトウモロコシは既に開花を終えているか、あるいは暫く開花しないかのどちらかの状態になります。つまり、試験圃場の外側には、花粉が飛んでも受精できる「雌花」が存在しないのです。

花粉の拡散を最小限に抑えるもう一つの方法としては、媒介昆虫が花や花粉にたどり着けないように、物理的な障壁を設けることです。植物の構造によって方法は異なります。例えば、1)植物につく個々の花に袋をかぶせる、2)細かいメッシュの袋を植物全体にかぶせ、光合成を可能にしながら、媒介昆虫を寄せ付けなくする、あるいは、3)背の高いトンネルのようなテントを区画または圃場全体にかぶせる、などです。

花粉の拡散を最小限に抑える極めて直接的な方法は、花粉が飛散する前に花自体を取り除いてしまうか、あるいは、開花する前に圃場試験を終了することです。規制対象GMO作物の圃場試験には幾つかの目的があり、その一つは、成長初期段階における植物の表現型を評価することです。このような場合には、植物から花を摘み取ってしまっても構いませんし(例えば、トウモロコシの上部にある、花粉が作り出される雄穂を取り除く)、開花する前に試験圃場の作物を全て刈取り、畑に鋤き込むこともできます。

ご質問の後半(「微生物や線虫が管理環境から逃げ出すのを、どのように防いでいるのでしょう?」)に関してですが、これらの微生物が、規制対象GMOの試験圃場に出入りしたとしても、リスクにはなりません。何故ならば、これらの微生物は種子を運ぶことはありませんし、花粉の動きは上述のように最小限に抑えられており、これら微生物が「形質」を試験圃場外の植物に転移させるというような兆項や証拠もないからです。よって、規制対象GMの圃場試験のほとんどにおいて、これら微生物を封じ込める現実的な必要性はありませんし、規制要件も設けられていないのです。

参考文献
Caviness, C.E. 1966 Estimates of natural cross-pollination in Jackson soybeans in Arkansas. Crop Sci. 6:211.
OECD. 2008. OECD Seed Schemes “2008”, Annex VII to the Decision: OECD Scheme for the Varietal Certification of Crucifer Seed and Other Oil or Fibre Species Seed Moving in International Trade.
OECD Document C(2000)146/FINAL Incl. 2003, 2004, 2005, 2006 & 2007 Amendments. OECD, Paris. 45 pp.
Simpson, D.M., and E.N. Duncan. 1956. Cotton pollen dispersal by insects. Agronomy Journal 48:305-308.
Van Deynze, A.E., F.J. Sundstrom and K.J. Bradford. 2005. Pollen-mediated gene flow in California cotton depends on pollinator activity. Crop Science 45: 1565-1570.

回答者 マイケル・ウィークス

回答者

マイケル・ウィークス

Michael Weeks

バイエル・クロップサイエンス社(米国)、米国登録マネージャー

Pagetop