GMO Answers
質問
「特許」は、民間企業が開発した種子の所有を認めていますか?
回答
この質問に対する簡単な答えは「はい」です。 しかし、簡単な答えでは、質問の意図を理解して、きちんとお答えしたことにはなりません。 分り易く説明するために、質問を言い換えてみましょう: 「知的財産権」は、民間企業が開発した種子を、その企業が所有することを認めていますか?1900年代初めごろから、科学者たちは、ハイブリッド植物の開発に必要なプロセスを、徐々に理解し始めました。 科学者たちは、二つの近交親系統を交配させ、収量の増加につながる雑種強勢を獲得することを学んだのです。 この科学的知見を利用し、パイオニア・ハイ-ブレッド社のヘンリー・ウオリス氏は、親系統の情報を企業秘密として管理し、それにより、「トレード・シークレット」として知られる知的所有権を手に入れました。 米国では、このようにして、種子会社は、植物に関する「トレード・シークレット」をほぼ一世紀に渡って保持することができました。農家は地元の種子販売店へ行き、特定の銘柄や種類の種子を注文し、購入します。 購入によって、農家は種子の所有者となり、それらの種子を植え付けて作物の収穫を目指します。 しかしながら、生物界の摂理によって、ハイブリッド種子は、収穫して翌年に播種しても、収量は30%ほど低下してしまいます。 従って、米国の農家は、毎年、地元の種子販売会社へ出向き、新たなハイブリッド種子を購入するのが当たり前になっています。 これは、世界のどの農家にとっても同じです。植物や育種についての知識は益々深まり、1970年代初めに至ると、科学者たちは、遺伝子情報の知識を基に、新たな手法を用いて育種することを学びました。 1980年には、米国最高裁判所は、現代的なバイテク技術で作られた生物は、一般的な特許法(通常特許)の下で保護される、との判決を下しています。米国最高裁判所は、2013年に、種子や植物を含めたバイテク生物について、植物育種者は通常特許を得ることができる、との再確認を行っています。よって、米国では、植物育種者は、法的に保護された財産権、すなわち、植物特許や企業秘密、商標権、植物品種証明、通常特許を通して、種子や植物の知的財産権を所有することができます。 農家は地元の種子販売店から種子を購入し、収穫を得る目的で種子を所有します。 しかしながら、農家は、種子や栽培作物についての知的財産権は所有していません。 物理的な種子や植物の所有と、種子や植物の知的財産権の所有を区別するということは、農家は、収穫のために種子を栽培することは出来るものの、ほとんどの場合、次作として植付けるために収穫した種子を蓄えることは出来ない、ことを意味します。このことは、映画のDVDを購入した人と同じです。 購入した人は、映画のDVDを所有しますが、DVDの知的所有権を所有することにはなりません。従って、その人は、法的に、映画のDVDを複製することはできないのです。ここまで読むと、「米国の法律は、なぜ、このように様々な形の知的所有権を認めているのか?」と、不思議に思われる方もおられるでしょう。 確かに、米国の法律は、知的所有権を作りだし、保護しています。何故なら、知的所有権は、開発者にIPR(法的に保護される財産権)を与えることで、イノベーション(革新)を生み出す動機づけとして機能するからです。 IPRを利用して、開発者は、新しい有益なイノベーションの創出に要した研究開発費用を、回収することができます。 種子会社は、新種の有益な種子を作り上げるために、一つの新種子あたり、何年もの年月(平均して13年)と何百万ドルもの費用を投じているのです。
回答者 ドルー・カーシェン回答者
ドルー・カーシェン
Drew Kershen
オクラホマ大学法学部、アール・スニード・センテニアル法学教授(名誉教授)