GMO Answers
質問
アン・ウィグモア博士は、彼女の著書の中で、「あなたが口にする食べ物は、最も安全で優れた効果を示す薬になるか、あるいは、ゆっくりと時間をかけて身体を蝕む毒になるかのいずれかである。」と述べています。博士のこの言葉は、GMOは知らぬ間に死に至らしめる毒である、という見方を示したものかと思いますが、どう解釈したらよいでしょうか。バイテク企業は、このような視点について、どう考えているか教えてください。
回答
アン・ウィグモア氏の視点は、私たちの健康における栄養の役割を表すにはあまりにも極端であると思います。食べ物は薬ではありませんし、毒でもありません。日々の生活に必要なのは、質の良い食事構成なのです。
私たち人間は雑食動物です。実際のところ、私たちは、様々な地虫や昆虫を始め、植物の根や海藻まで、どんなものでも食べています。砂糖(はちみつ)や塩は、はるか昔の私たちの祖先の時代から、賞味されてきました。古代の人々は、十分なエネルギーを摂取するために、一日に何ポンドもの(大量の)肉を食べていました。更に、様々な木の実や植物の種、草など、周りにあるものを何でも食べ、空腹を満たしていました。これらは、彼らが十分な肉や食べ物を探し求めて常に移動する必要があったことを意味しています。手に入る食べ物の量は、季節によって大きく変動しました。そして、得られる食べ物の質も、一様ではありませんでした。
今から1万年前、人類が農耕を始めた頃から、このような状況は変わりました。小さく弱々しい野草や塊根、植物は、育種によって、より大きく栄養に富んだ穀物やでんぷん、果実、野菜に改良され始めたのです。それらの多くは、貯蔵され必要な時に食べることが出来るようになりました。また野生の動物の一部は、肉やミルク、その他の食べものの原料用に、家畜化されるようになりました。この時以来、植物や動物の交雑育種技術は、より新しく革新的な農業技術の開発と並んで、留まることなく発展し続けてきました。その結果、世界中で飢餓や栄養失調、乳幼児の死亡率は着実に減少し、同時に、平均余命は伸び、人々の生活の質は確実に向上してきました。
この100年の間に成し遂げられた様々な科学技術の革新は、農業の効率の向上に繋がり、今や70億人もの人口を養うことができるまでになりました。遺伝学の発展は、医療科学に大改革をもたらしましたが、農業においても同様で、私たちは、歴史上かつてないほど少ない農地で、より健全で適応性が高く、そして栄養価に富む植物の栽培ができるようになりました。
遺伝子組み換え技術は、数ある新技術のうちの一つです。遺伝子組み換えでは、ある種の生物に特定の形質あるいは特徴を付与するために、別の種の生物の遺伝子を導入します。人間と同じように、植物もまた何千もの遺伝子を持っています。植物のDNAは、人間のそれと変わりありません。遺伝子はあらゆる生物が持っており、私たちは普段の食事を通して、DNAやRNA、タンパク質(DNA情報に基づいて作られる)を何の問題もなく食べています。食べものに含まれるタンパク質が長期的な健康影響を及ぼすことはありません。アレルギー反応を起こすことが知られているものも僅かにありますが、それらは伝統的な交雑育種技術に由来するもので、GM技術によるものではありません。GM技術は非常に精密であるため、アレルギーの原因となるようないかなる遺伝子も見つけ出し除外することができるのです。その精密さゆえに、食品供給において、GM技術由来のタンパク質によってアレルギー反応が起こったという例は、今日まで一つも報告されていないのです。
農業の様々な技術についてより詳しく理解することで、これらの技術が、2050年には90億人になると予測される世界人口に安全な食を供給する上で確かな助けとなることを、お分かりいただけることと思います。100年前の技術では想像することさえできなかったことなのです。
回答者 ロバート・マリー回答者
ロバート・マリー
Robert Murray
医師、オハイオ州立大学、人間栄養学教授