GMO Answers

質問

質問者 Veronica (メキシコ、チワワ州、フアレス)

モンサント社はGMOを安全と「判断する」までに、どれくらい長期の試験を行ったのでしょうか?最も長期の試験はどれくらいの期間だったのでしょうか?

回答

最初の質問は、GM作物の安全性を立証するのにどれくらいの期間が必要か、という意味かと思われます。 先ず、明確にしておくことが大切ですので、あえて強調しますが、GMOが従来の作物と同様に安全であると「判断する」のは、モンサント社のようなGM作物の開発者ではありません。 世界中の規制当局の科学者たちが、作成された安全性のデータをレビューし、判断するものです。 しかしながら、これらの製品の安全性を実証、あるいは評価することは、GM作物の開発者に求められています。製品の使用が承認され、農家の手にわたる前に、各国の法令が定めた要件を満たすことは、開発者の責任として、極めて重く受け止められています。 

潜在的なGM製品については、それぞれの安全性を実証するために、 研究チームは、圃場試験や包括的な試験を、何年にもわたって行い、新たな形質や遺伝子組み換えが、作物の安全性に影響を与えていないことを、科学的に確かめます。 これらの研究チームは、製品の安全性に重点をおいており、厳格で科学的に行われる内部審査や承認のそれぞれにパスできない製品については、開発が中止されます。 それぞれの潜在的GM製品について行われる試験には、例えば、遺伝的な特徴や有効性、栄養学的特徴、農学的な性能、環境安全性などの試験があり、これらは科学的な規制当局の要件や、世界保健機関(WHO)や食糧農業機関(FAO)、経済協力開発機構(OECD)、国際食品規格委員会などの国際機関が定めたガイドラインに従っています。 新たな植物バイオテクノロジー形質が、発見、開発され、国際的に承認されるまでには、平均して13年の年月と、1億3,600万米ドルの費用がかかります(フィリップスマックドーガル研究:バイテク作物を市場に出すまでの費用)。 更に、製品の使用が承認され、農家の手にわたるまでには、安全性のデータは、世界中の何百人もの規制当局者によって、審査されるのです。

GM作物の研究と審査は、現在に至る30年間にわたって継続して行われており、科学的証拠の重み、そして世界の科学界の出した結論によって、強く支持されています。 実際、GM作物は、農業の歴史上、他の如何なる作物よりも審査、検査されており、従来の作物と同等に安全であることがと立証されています。

二つ目の質問にお答えしますと、最も長い安全性試験は給餌試験で、特に作物そのもの(例えばトウモロコシの穀粒やダイズの粉)を用いる90日毒性試験は、一般的に行われる給餌試験としては最長のものです。しかし、この試験は、モンサント社が自社製品の安全性を判断する上で、唯一の試験という訳ではありません。 モンサント社は、GM作物の安全性評価に、証拠の重み(WOE)という手法を活用しています。 このWOE手法は、国連の世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO)の国際食品規格委員会(Codex)によって、独自に開発されたものです。 従来作物やGM作物の食品安全性に関するCodex基準とガイドラインは、国際的に認められています。 厳密に言えば、モンサント社は、「現代的バイオテクノロジー由来の食品」(Codex2009年)の現行バージョンに示されたガイダンスを用いて、安全性評価を行っています。

 

これらの評価には、1) 挿入遺伝子の分子的特徴と導入タンパク質の安全性評価、2) GM作物と、同じ場所で同時に栽培された従来型対照作物の農学的性能比較、3) GM作物と従来型対照作物の組成同等性(主栄養素、微量栄養素、反栄養素)、 そして4) 個別のケースに応じて実施される動物試験、などがあります。 欧州食品安全機関(EFSA)は、動物試験について最近、「GM植物およびGM植物由来の食品や飼料が、それらの対照物と比較して、導入された形質を除き、組成上同等と評価された場合には、栄養素の同等性を立証するための更なる試験は必要としない」(EFSA2011年)と明言しています。 しかしながら、動物試験は、実際のところ、規制審査の促進を図るための付加的な安全性保証として、「個別のケースに応じて」と言うよりも頻繁に、実施されています。 前述の4つの評価の夫々には、有害な影響を察知することのできるように、複数の評価指標が含まれています。 評価結果は総合的に証拠の重み付け(Weight Of the Evidence:WOE)が検討され、いずれの分析によらず、有害な影響が認められた場合には、その製品の安全性を確定するために、的を絞った追加の分析が行われることになります。 市販されているモンサント社の全てのGM作物は、従来型の対照作物と同様に安全で栄養価が高いことを示すWOEを有しています。 さらに、GM作物が20年近く栽培されてきたという事実は、GM作物由来の食品が従来の食品と同等に安全であることを示す安全性試験の結果が、確かであることを実証しています。

市販のGM作物に十分なWOEがあるにもかかわらず、この技術の批評家たちは、より長期の給餌試験を行うべきだと主張しています。 おそらく彼らの理屈は、動物への給餌期間が十分に長ければ、何かしら毒性の兆候が表れるはずだ、というものでしょう。しかしながら、この理屈は、90日試験には、より長期の試験で現れる可能性のある毒性を予測する能力がある、という一般的な認識とは矛盾しています。 90日試験についてEFSAは、「実験室での動物を用いた90日給餌試験は、化合物の有害影響を検知するには十分で、そのような有害影響は慢性的な暴露においても現れると思われる。よって、一般的には、GM食品や飼料の慢性毒性試験は、安全性の評価には、新たな有益情報をもたらさないものと考えられる。」(ESFA2008年)と言及しています。 GM作物の給餌試験に関する科学論文のレビューでは、90日試験が予測能力を持つことを示す典型的な例が紹介されています。例えば、専門家の査読が行われている科学誌に発表された研究報告は、GMダイズの給餌期間が、90日であれ、1年あるいは2年であれ、安全性に対する懸念は認められなかったと結論しています。

1996年に、モンサント社は、幾つかの動物種を用いて行われたラウンドアップレディー・ダイズの給餌試験について、詳細な結果を公表しました。ラウンドアップレディー・ダイズは、CP4 5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)タンパク質をコードするcp4 epsps遺伝子を含み、これを発現する植物にグリホサート抵抗性を持たせたものです。給餌試験の一つとして行われた、ラットを用いた90日試験では、ラウンドアップレディー・ダイズは、従来型の対照作物と同様に安全で栄養価が高いことが証明されています(ハモンら、1996年)。数年後、52週ならびに104週にわたる給餌試験の結果が、東京都健康安全研究センター環境保健部の研究グループにより発表されました。この研究報告で著者らは、長期に亘るGMダイズの摂食は、ラットに対し有害影響をもたらさなかった、と結論しています(サカモトら2007年、サカモトら2008年)。 90日試験の予測能力に対するEFSAの評価、並びに、ラウンドアップレディー・ダイズに関する既存のWOEに基づけば、これらの試験結果は、予想されたものでした。よって、90日試験が実施され、結果がその作物の他のWOEと一致していれば、私たちは確証的な結果とみなし、厳密な安全性評価の一部として考慮します。90日給餌試験の結果を確認するだけの長期試験を更に行うことに、科学的な価値は殆どありません。このような長期試験は、動物保護の観点から慎重であるべきです。科学界には、可能な限り、動物試験を減らし、改善し、そして置き換えるべき倫理的な義務があるのです。

参考文献:

Codex Alimentarius (2009). Foods derived from modern biotechnology. Rome, Italy, Codex Alimentarius Commission, Joint FAO/WHO Food Standards Programme, Food and AgricultureOrganization of the United Nations. Second Edition.

EFSA (2008). “Safety and nutritional assessment of GM plants and derived food and feed: The role of animal feeding trials.” Food and Chemical Toxicology 46: S2-S70.

EFSA (2011). “Guidance for risk assessment of food and feed from genetically modified plants.” EFSA Journal 9: 2150.

Hammond, B. G., et al. (1996). “The feeding value of soybeans fed to rats, chicken, catfish and dairy cattle is not altered by genetic incorporation of glyphosate tolerance.” Journal of Nutrition 126: 717-727.

Sakamoto, Y., et al. (2007). “A 52-week feeding study of genetically modified soybeans in F344 rats.” Shokuhin Eiseigaku Zasshi 48: 41-50.

Sakamoto, Y., et al. (2008). “A 104-week feeding study of genetically modified soybeans in F344 rats.” Shokuhin Eiseigaku Zasshi 49: 272-282.

 
回答者 マイケル・コッホ

回答者

マイケル・コッホ

Michael Koch,Ph.D.

博士・認定トキシコロジスト、モンサント社、毒性学新技術部門、リーダー

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