GMO Answers
質問
他の技術と同様に、GMOにまつわる技術も、それが本質的に良いものである、あるいは悪いものである、とは一概には言えません。ただ、悪用される恐れはあります。 この技術をより良く認識してもらうため、また悪用を防ぐために、どのような対策がとられているのでしょうか?
回答
確かに、ほとんどの技術は、それが本質的に良いものである、あるいは悪いものである、と一概に断じることはできません。むしろ、技術がどのように使われるかに基づいて評価されるべきでしょう。遺伝子組み換え作物や食品について言えば、この技術が導入されてから今日に至るまで、大きなベネフィットがもたらされています。このような成果は、2014年5月に英国で発表された報告書に詳述された通りです。 また、この技術は、今後、さらに大きなベネフィットをもたらすものと期待されています。 しかしながら、他の技術と同様に、GM技術も、悪意をもった、あるいは反社会的な方法で適用され、悪用される恐れがあります。このような誤用には、主に二通りの確認が行われています。
一つ目の確認は、GM製品を開発している企業が行っています。 これらの企業は、他の産業が長い歴史の中で培ってきた経験から、法的責任や政府による取締り、顧客からの反発、マスコミによる抗議、市場規制、株主や従業員の不満などが、危険な製品が作られないようにするための抑止力になることを学びました。すなわち、有害な、あるいは誤用の恐れがある製品の商品化を阻止する判断は、企業の利益に照らして行われます。このような抑止力が、バイオテクノロジー業界において、有効に機能した例がいくつかあります。例えば、1990年代に、パイオニア・ハイブレッド・インターナショナル社は、より栄養価の高い食品の生産をめざして、ブラジルナッツ由来の遺伝子を使い、新たな系統の遺伝子組み換えダイズを作りました。このダイズは、検査の結果、アレルギー反応を引き起こす可能性があることが判明し、パイオニア・ハイブレッド社は、このダイズの開発を中止し、製品の商品化は見送られました。同様に、モンサント社は、遺伝利用制限技術、もしくはGURT(批評家はターミネーター技術と呼称)、の知的所有権をもっていますが、同社は、自発的に、この技術の市場化は行わないと宣言しています。 この技術には、遺伝子組み換え植物が生きた花粉をばら撒くことを防ぐ、という重要な潜在的ベネフィットがありましたが、この技術が誤用されると、自給自足の農家が自ら栽培した作物から種を採り、次の栽培に使うことが出来なくなる、との批評家たちの懸念に応え、モンサント社はこの技術の使用を差し控えることにしたのです。
二つ目の確認は、政府による監視です。他の殆どの食品とは異なり、GM食品は、政府の規制機関によって、その安全性が詳細に審査されます。この審査プロセスでは、GM製品の食用としての安全性や環境へのインパクトが、科学的な視点に基づき、徹底的に評価されます。様々な規制要件を満たすためには、通常の製品開発に要する時間と費用に加え、5年間の追加試験が必要であり、この費用は一作物につき、3,500万ドル以上にのぼるものと推定されます。政府のGM製品に対する厳格な監視によって、危険な、あるいは許容できない製品は、ほぼ確実に排除されるでしょう。一方で、過重な規制要件は、大型の商業的に見合う作物しか市場化されない、という残念な結果を招いています。大学や規模の小さな研究機関で開発されたGM製品は、たとえそれらが、少数の消費者や発展途上国の低所得の農家に極めて大きなベネフィットをもたらす可能性があるとしても、厳しい規制のハードルを乗り越えなければならず、実用化が困難です。したがって、有害な製品を識別し排除できる規制要件を構築することと、規制要件を満たすためのコスト負担が難しい貴重なイノベーションを無駄にしないようにすること、この双方の微妙なバランスをとることが大切です。
回答者 ギャリー・マーチャント回答者
ギャリー・マーチャント
アリゾナ州立大学、サンドラ・デイ・オーコナー法科カレッジ、リージェント教授かつリンカーン教授(新興技術、法律、倫理分野)