GMO Answers

質問

質問者 gapoli (ミズーリ州、セントルイス)

GM作物の導入は生物多様性にどのような影響をもたらしていますか? 既存の作物は、より小型で、生物多様性の乏しいGM作物に置き換えられているのでしょうか? そうだとすれば、伝染性の植物病や害虫の適応が進みやすいため、より大規模な影響の生じるリスクが高いのではないでしょうか? リスクが増しているならば、科学者たちや業界、農家、規制当局は、どのように対処しているのでしょうか?

回答

沢山のすばらしい質問に驚いています。それぞれについてお答えしたいと思います。

まず、GM作物の導入は生物多様性にどのような影響をもたらしていますか?

生物多様性は、実際のところ、GM作物の導入により改善されています。現在までに商業化されたGM作物は、農業が生物多様性に与える影響を緩和してきました。これは、GM作物の導入により、保全耕起を行うことが増え、農薬の使用が減り、環境により優しい除草剤が使用されたことで、収穫量が増加したため、新たな農地を開墾する必要が減ったことなどが要因です。組換え 

既存の作物は、より小型で、生物多様性の乏しいGM作物に置き換えられているのでしょうか?

GM作物が導入されるに従い、品種改良の対象が特定の高価値品種に集中するため、作物の遺伝子多様性が低下するのではないかとの懸念が示されるようになりました。しかしながら現在までに行われた調査(米国とインドのワタ、米国のダイス)では、GM作物が作物の多様性を低下させたという証拠は確認されていません。もう少し広い視点で言えば、GM技術は、作物の多様性を増加させる可能性が高いと言えます。これは、GM技術により、未活用の代替作物の強化が進み、農業生産性が低い、病害虫に弱いため栽培に向かない、あるいは好ましくない性質をもつなどの理由で、あまり栽培されていなかった品種が、幅広く生産されるようになる可能性があるためです。さらに、遺伝子組み換え技術は、サツマイモやキャッサバなどの、いわゆる孤児作物(品種改良がすすんでいない作物)の改良に使われており、これらの作物の選択肢が増え、特に(多様性に対し)敏感な地域での多様性を向上させる可能性があります。組換え 

そうだとすれば、伝染性の植物病や害虫の適応が進みやすいため、より大規模な影響の生じるリスクが高いのではないでしょうか?

統合的病害虫管理は、どのような栽培システムにおいても、重要な基盤となるものです。 バイオテクノロジーは、極めて幅広く、より効果的な手段を提供し、既存のシステムと共用することが可能です。また、様々な病気の出現や害虫発生の変化が予測される中、急速に採用が進む可能性があります。 さらに、遺伝子のスタック化や遺伝子の輪番使用は、病害虫の圧力を軽減、病害虫抵抗性管理の確実性や持続性をより強固なものにし、幾重にもわたる保護を可能にします。一方、わずかながらマイナスの効果もあります。 例えば、殺虫剤は主要な標的昆虫以外の昆虫にも効果を示す場合がありますが、Bt作物は非標的昆虫には効果が無いため、これらの非標的昆虫への抑止力が低下してしまいます。

除草剤耐性作物の導入は、保全耕起の採用を促進し、その結果、土壌流亡が抑制され、水利用効率が高まり、農薬の流出が減少しました。GM作物の栽培農家では、殺虫剤の使用が減り、より環境に優しい除草剤が使われるようになりました。 既存技術の幅広い採用によってもたらされるベネフィットに加え、現在開発途上にある幾つかの技術は、農業が生物多様性に与える影響を緩和する上で、極めて有効であると考えられます。 特に気候変動への対応という観点からは、作物が益々増大する環境ストレスに対応できるよう、解決策を作り上げることが急務です。例えば、土壌の劣化、異常高温や低温、干ばつ、洪水や塩害などの環境ストレスに対する解決策です。 干ばつや洪水、塩害、その他のストレスに対処する技術は、必ずしも最適とは言えない土壌での作物生産を可能にし、劣化した土壌での収量を引き上げることで、生物多様性の高い地域を農地に転換する必要性を緩和してくれます。 非生物的ストレスのうち、最も深刻なものは、おそらく、水資源の不足でしょう。

残念ながら、灌漑も、農耕地が劣化する主な要因の一つです。 なぜなら、灌漑水に含まれる天然の無機塩が、時間と共に土壌に蓄積してしまうからです。 実際、世界の灌漑農地は、塩分過多のため、その40%でしか作物の栽培が出来ないのです(米国では25%)。 現在開発されている耐塩性作物は、通常よりも50倍も塩分濃度の高い(海水の三分の一の塩分濃度の)土壌でも、生育が可能です。このような耐塩性技術は、ますます深刻化する淡水資源への塩水の浸食問題に、極めて有効な解決策になり得ます。 乾燥耐性技術は、土壌水分が長期にわたり低下した農地でも、作物の生存を可能にします。 この技術は、近い将来商業化される見通しです。 窒素利用効率技術も、同様に開発途上にありますが、窒素肥料の地表水への流出を低減することが出来ます。 この技術は、収量を維持あるいは増加させながら、肥料の使用量を減らすことができ、肥料の入手が困難な地域では、施肥割合を低減することが可能です。

世界の人口は、2050年には90億人に達し、その食料を賄うには、既存の食料生産を70%引き上げる必要があります。世界の農業システムが、この目標達成に向け拡大を続ける中、GM作物は、引き続き、生物多様性に対する圧力の緩和に貢献することが可能です。 生物多様性への影響を抑制しつつ、生産性の向上を図ることは、持続可能性には不可欠です。

リスクが増しているならば、科学者たちや業界、農家、規制当局は、どのように対処しているのでしょうか?

既に述べたように、リスクは減少しており、増加していません。他の生産システムと同様のパラメーターに依存しているのです。 ですから、地球資源の確実な管理には、他の生産システムと同様なリスクに焦点をあてた管理システムが採用されなければならないのです。

回答者 マルチナ・ニューウェル-マックグロッフリン

回答者

マルチナ・ニューウェル-マックグロッフリン

Martina Newell-McGloughlin

カルフォルニア大学デービス校、国際バイオテクノロジープログラム、ディレクター

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