GMO Answers
質問
GMOを作るプロセスでは、基本的にショットガン手法を用い、多くの人々が信じているような、不可能と思えるような正確な挿入は行っていない、また、どうあれ、極めて多くの有害なタンパク質が作られるのは確かだ」と研究者たちが述べていた記事を読んだことがあります。このような有害なタンパク質を取り除くために、十二分な試験がされているのでしょうか?
回答
手短にお答えすれば、組換えプロセスの初期段階では、「ショットガン」あるいはランダム・アプローチといわれる方法がとられていますが、研究者たちは、様々なツールや手法を用いて、適切でない場所に挿入が起こった個体、あるいは、挿入が周辺の遺伝子を阻害したり、負の影響を与える可能性のある個体は、全て排除しています。その後、研究者たちは、残った植物個体を対象に厳格な安全性試験を行い、挿入によって得られるべき固有のタンパク質を除いて、新たなタンパク質が生じていないかを調べます。
質問にある其々の事柄について、少し長くなりますが、私の答えをお示しします:
1.ショットガン vs. 正確な挿入:以前、あなたの質問と同じような質問に同僚が答えていますので、下のサイトを参考にしてください。
2. 試験: 遺伝子組み換えによる作物ゲノムへの挿入には長い歴史がありますが、研究者たちは、最終製品に意図しない挿入が含まれることのないよう、GM製品を選抜し、育種し、正確に特性を把握しています。開発並びに評価プロセスでは、意図した挿入の特性が、きちんと把握されます。
GMOを作るプロセスでは、GMOに特別な改変が行われる場合を除き、新たなタンパク質が作られることはありません。これらの方法で作られた作物は全て、正確なDNA配列が徹底的に調べられ、組換えの特性が把握されます。DNA配列の分析を行うことにより、意図した、そして完全に特性が把握された挿入がGMOに含まれていることが確実に分りますし、挿入された遺伝子が既存の遺伝子を阻害していないことも確認できます。DNAの特性把握をすることで、私たちは、遺伝子挿入が翻訳されたタンパク質に与える影響について、情報を得ることができます。私たちは、新たな形質転換のゲノム配列決定に関わる技法を開発しました。これにより、挿入の特性把握ができるようになり、DNAを個々のヌクレオチドやコドンのレベルで並べることが出来るようになったのです。さらに、私たちの育種専門家は、新品種の開発過程で、GMであれ非GMハイブリッドであれ、何万もの植物個体を検査しています。これによって、どのような効果であれ、意図しないものはスクリーニングされ、排除されているのです。
3.「どうあれ、極めて多くの有害なタンパク質が作られるのは確かだ」: この意見については、数千年にわたる人類の作物育種とのかかわりが示す証拠に照らし、同意することはできません。数千年の間、育種によって、親世代にくらべ優れた性質をもつ植物が選抜され、繁殖されてきました。これらのより優れた性質は、植物のゲノムに、トランスポゾン(DNA配列の転位)や自然の無作為な突然変異、再結合など内生的な要因が働いたことで起こった遺伝子組み換えの産物、とも言えるのです。現在に至る100年間には、自然発生的な突然変異は、化学薬品やX線を使った突然変異によって補完されてきました。このような方法でもたらされる一世代あたりの遺伝子変化は、自然界での突然変異に比べ、はるかに多くなります。育種活動は、植物ゲノムに変化をもたらしてきましたが、育種によって有害なタンパク質が増加したという証拠は確認されていません。同様に、ゲノムへの遺伝子挿入は、転位性因子の挿入に相当するものですから、これにより毒性物質が産生されるとは考えられません。
この歴史を比較すれば、GMOを作る過程で作物にもたらされた変化は、事実上同等といえますが、程度は極めて小さいといえます。 そのような視点で見れば、このブログ(http://www.science20.com/print/91836)は面白いかもしれません。非GM作物の育種で、突然変異がどのように活用されているか、うまく説明されています。
回答者 アンドレ・シルバノビッチ回答者
アンドレ・シルバノビッチ
Andre Silvanovich
モンサント社、生物情報学・配列分析部門、リーダー
回答
質問いただき有難うございます。同様な質問に、最近カリフォルニア大学、デービス校、バイオテクノロジー・プログラムのDenneal Jamison-McClungが回答していますので、紹介します。
「ゲノミクスの進歩や、ゲノム編集といった新たな分子ツールのおかげで、植物ゲノムには、一つの塩基変換から遺伝子全体の挿入や削除まで、極めて特異的な遺伝子変異を、簡便にもたらすことができるようになりました(Cressey, 2013; Li, 2013)。将来的な商品化に向け、ゲノム変異やイベントは、分子レベルから植物全体のパフォーマンスにいたるまで、それらの持つ特性がきちんと把握されています。DNAの配列分析が比較的容易・安価にできるようになったため、植物遺伝技術者たちは、生物情報学を駆使して、遺伝子発現の変化(トランスクリプトミクス)やタンパク質の産生(プロテオミクス)など、植物ゲノムの変異を親世代の作物品種と比較して確認できるようになっています。分子アッセイに加え、組織や植物体全体(温室や圃場で)のスクリーニングを通じて、生長や発達、生理的な変化についても調べられています。最終的には、新たなバイテク品種は、親品種との実質同等性を確認するため、可食部分の栄養成分が評価され、標準の範囲に収まっているか否かが確認されます。このような多段階の評価で、好ましくない遺伝子挿入イベントは同定され排除されているのです(Ricroch, 2013)。」
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