GMO Answers
質問
これまでに、GMOが人の健康に有害であると結論付ける正当な研究は一つもないことは理解していますが、GMOが人の健康に無害であることを証明する研究はされてきたのでしょうか?
回答
この質問は、よく考えられた良い質問ではあるのですが、科学で「否定(~でない)」を完全に証明することは不可能です。例えば、「来年あなたが皇帝ペンギンに襲われることは絶対にない」ということを証明することは出来ません。ペンギンの習性から、そのようなことはほぼ確実にないであろうと言うことは出来ますが、しかし、どれだけ綿密に調査したとしても、それが起こらないということは証明することは出来ないのです。GMO食品に対しても同じことが言えます。科学的研究から、「GMO食品により健康が害されることは無いであろう」ということは言えます。また、今日までに実施されてきた信頼のおける研究から、GMO食品による健康被害は報告されていません。しかし、将来的に危険性が全くないということを証明することは出来ません。私たちが言えることは、現在商業栽培が承認され市場に流通しているGM形質の安全性に関する研究結果は、GM作物が同種の非GM作物と同じであることを裏付けるものであるということだけです。
GM作物に加えられている改変は、私たちが従来からずっと食べてきている食べ物の一部である分子(タンパク質やDNA)に対して行われているだけなので、新たな食品リスクを引き起こすことはないと見られています。また、改変によりわずかに導入された遺伝物質は、通常の食べ物と同じように消化器官で分解されます。世界中の多くの国々で実施された非常に広範な安全性審査の結果、GM作物は、食品安全性や環境に対する影響において、同種の非GM作物と何も違いがないことが分かっています。
欧州連合は、「25年以上もの間に、500以上の独立研究グループが行ってきた130を超える研究の大部分において、バイオテクノロジー、とりわけGMOが、従来型の植物育種技術と比べ危険性の高いものではないという結論に至っている。」(『EUが実施したGMO研究の10年』 欧州委員会研究イノベーション総局 2010年)と述べています。
GM作物の食品安全性評価に関する学術研究は、これまでに多数実施されてきました。米国科学振興委員会(AAAS)の最近の見解では、それらの研究結果を総括すると「バイオテクノロジー分野の最新分子技術を使って改良された作物の安全性は、科学的見地から明らかである」とされています。
GMOが家畜やペットの餌として、そして人の食料として消費されるようになってから16年(2013年当時)が経ちますが、アレルギーや癌の発生、もしくは死に至るケースを含め、GMOが何らかの健康被害を引き起こした事例は一つも確認されていません。GMOの有害性を示す研究データは、信ぴょう性に乏しく価値のないものとされ、大多数の科学者がこの研究の正当性を認めていません。
現在市場で流通しているGM製品についての有害性を示す新たな情報や研究データが確認された場合、それらの情報や研究データはFDA(アメリカ食品医薬品局)へ報告されなければなりません。FDAは、GMOを原料とする食品を含め、食糧ならびに食料製品全般の安全性を評価し行政上の措置を行っています。
回答者 ピーター・J・デービス回答者
ピーター・J・デービス
Peter J. Davies
コーネル大学(米国、ニューヨーク州、イサカ)、植物生理学教授 兼植物生物学国際教授