回答

遺伝子組み換え（GM）植物のない世界を想像するには、過去20年にわたる農業事情を振り返り、これらの技術やソリューションが無かった場合の影響を考える必要があります。現在、世界27ヵ国の1,800万人以上の農家が、これらの技術やソリューションを効果的かつ持続的に活用し、収量を奪い収穫物にダメージを与え、究極的に農家の収益や健全性を損ねる病害虫や雑草に対処しています。このような対処が出来ない場合、どのようなインパクトが生じるかを考えねばなりません。　気候変動や資源不足の状況は変わることがなく、避けることが困難ですので、恐らく地球も、これらによって生じる農耕地面積の更なる減少に、苦しむことになるでしょう。それは、増え続ける人口に、食糧や飼料、繊維を供給することを困難にするものと思います。

GM技術のない世界は、確実に、農家がこれらの問題に対処する際の手立てに対してのみならず、私たちの暮らす世界にも影響を及ぼすことでしょう。　具体的には、安全かつ健康的で、栄養に富む食料を手頃なコストで供給している様々な生産国に影響を与えるでしょう。このような食料は、現在GM作物の栽培に慣れ親しんだ27以上もの国々で作られているのです。

国際アグリバイオ事業団（ISAAA）によると、1996年から2012年の間、GM作物は食料確保、持続可能性、そして環境や気候変動に様々な形で貢献してきました。それには次のものが含まれます：

• 作物生産の増大、1,169億ドル(米ドル)相当の生産増
• 1億2,300万ヘクタールの農地開発を抑制し生物多様性を保全
• リソース不足の農家とその家族1,650万戸（約6,500万人に相当）の貧困緩和を手助け
• 二酸化炭素の排出を267億kg（一年間で1,180万台の車を路上から取り除くのと同じ効果）削減し、農業が環境に与える影響を低減

 今日の農家は、様々な技術や栽培方法を利用しており、それぞれの農家は、その中から自身の顧客や市場のニーズ、農業経営の目的に適したシステムを選択しています。　農家にとって、農場経営の経済性や持続可能性を見据え、ニーズやそれらへの対応策を自ら評価できることは、極めて重要です。作物生産の観点から、私たちは、消費者と農家の双方の選択肢を、継続的に支援してゆく必要があります。

ここ数年、私たちは、食料や飼料、繊維の生産に、直接的影響が及んだ例を目の当たりにしてきました。例えば、「気候」による影響は、消費者レベルで、食料の品質や価格、供給量に、極めて大きなマイナスのインパクトを及ぼしたはずです。　しかしながら、私たちがそれほど大きなインパクトを経験せずに済んだ理由の一つは、GM技術の利用を選択した農家に、この技術の恩恵がもたらされていたことにあるのです。　例えば、米国は近年干ばつに見舞われていますが、その影響は、より乾燥に強い現代的な作物品種が採用されることで緩和されているのです。　米国南東部における作物栽培では雑草防除が問題になっており、他地域にも拡大していますが、これは、新たな作物品種の導入に加え、より効果的で持続可能な雑草管理の手法を併せて採用することで対処されようとしています。例えば、新たな除草剤耐性作物を、除草剤や作物をローテーションで使用したり、栽培管理活動と組み合わせて栽培したりする方法などです。

バイオテクノロジーが私たちの日々の生活にどれだけの影響を与えているか、多くの人は気づいていません。一方、GM作物が世の中に存在しなかったとすれば、世界中の消費者に、健康的で栄養価の高い食料や飼料、繊維を供給するために努力している農家は、彼らが直面する多くの重要な課題に対処することが困難となり、私たちは著しく後戻りせざるを得なくなってしまうことでしょう。

私たちの複雑な地球を維持し、豊かにするための革新的なソリューションの開発には、時間がかかります。私たちは、そのような時間を無駄にしてはなりません。　植物育種におけるGM技術の利用は、時間の有効活用の一手段として立証されており、これは、速やかで活力のある進歩を可能にしています。　GM作物を利用する農家は、ほぼ20年の間に、数百倍の率で増え、現在では何百万もの人が採用しています。その多くは、最も貧しく、最も困難な状況にある人たちです。今後20年で、私たちがどこまで前進しているかが楽しみです。

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回答者

スコット・コーン

Scott Kohne

バイエル・クロップサイエンス社、種子部門、NAFTAマーケット・アクセプタンス・マネージャー

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