GMO Answers
質問
GMOの将来には、どのようなプランが描かれているのでしょうか?やがてはすべての作物がGE(遺伝子組み換え)になるのでしょうか?
回答
ご質問への回答、すなわち将来を予想するのは簡単ではありません。当初は、遺伝子組み換え形質が組み込まれるのは、主要な作物(例えばトウモロコシ、ダイズ、ワタ・・)だけではないかと思われていました。何故なら、研究や開発、そして規制のプロセスにかかる費用が高額すぎるため、ほとんどの作物で投資の回収が困難であったからです。 しかしそのコスト障壁は、より新しい、よりよいツールのお陰で、次第に低くなってきました-これらのツールの多くは、医学や産業に幅広く遺伝子組み換え技術を応用するために開発されてきたものです。 今ではオレンジやトマト、バレイショ、そしてリンゴのような規模の小さな「スペシャリティ作物」にまで組換えが拡がり、幾つかの製品が市場化されようとしています。またこれらの製品には、はるかに小さな企業や、生産者団体からの資金提供を受けた大学などによって開発されたものも含まれています。開発途上国の農家に役立つように組換えされた作物の幾つかは、政府機関や非営利団体によって開発されています。「ゲノム編集」のための画期的な新手法も幾つか出始めており、これらはプロセスをより迅速化し、コストを低減化するものと思われます。バイテク手法に関する原特許の多くは期限切れになりつつあります。これにより新規参入者たちに道が開かれることになるでしょう。すなわち、技術的な面から言えば、GE作物がもっと増える可能性は大いにあります。
ただ、これらの技術が実際に商品化されるか、あるいは農家が利用できるようになるかを予測するのは困難です。多くの国々(例えばEU諸国のほとんど)の規制当局は、自国における科学的評価で技術の安全性を確認しているにも関わらず、また自国の農家が技術による恩恵を受けたいと望んでいるにも関わらず、これらの技術の利用を阻止し続けています。 発展途上国の規制当局者たちは、往々にして反GMO活動家からの圧力に影響され、貧しい農家は、多くの組換え作物形質を殆ど利用することが出来ません。
また、豊かな世界にいる主要な食品業者たち(例えば食品加工業者や製造業者、小売業者)は、自社で扱う主要作物が「GMO」に代われば、活動家たちからの批判を浴び、ひいては自社ブランドに傷がつくのではないかと心配しています。 大抵の場合、これらの企業はサプライチェーンにおいて、GE作物の商品化を効果的に阻止できるような強い力をもっているため、様々な活動家グループが、すでに強い圧力をかけ続けています。また、生産者たちは、活動家たちから予想される攻撃や、彼らの消費者を怖がらせるための宣伝活動によって、自分たちの作物の「ブランド」全体に悪影響が及ぶのではないかと心配しています。
GE作物の選択肢が広がるのか、あるいは従来通り、ごく少ない主要作物だけに留まるのかは、現在、市場化に向けて動き出している幾つかの製品の動向にかかっています。フロリダのオレンジ産業は、新たな外来の細菌病による壊滅的な打撃を、GE技術の採用で切り抜けることができるでしょうか?消費者は、切っても茶色くならずビタミン成分も失われないりんごを買うという選択肢を、手に入れることができるでしょうか?バレイショ農家は、アンデス山脈の近縁野生バレイショからの病害抵抗性遺伝子で改良されたバレイショを、栽培できるようになるでしょうか?保管中の傷みや糖分の蓄積によって廃棄されるバレイショを減らすことができるようになるでしょうか?
さて、「やがてはすべての作物がGEになるか?」という質問に戻りますと、 技術や特許、費用の観点からみて、答えは「はい」となります。 しかしながら、非科学的な規制や商品ブランドへの脅威が続くのであれば、「いいえ」という回答の方が適当かもしれません。
回答者 スティーブ・サヴェージ回答者
スティーブ・サヴェージ
Steve Savage
サベージ&アソシエイツ社、コンサルタント