GMO Answers

質問

質問者 rebeccarichardss (カリフォルニア州、ヴァレーホ)

GMOは、エネルギーや燃料として、どのように使われていますか?GMOがそのような用途に使われることのマイナス面には、主にどのようなことがありますか?また、これらのことについて更に詳しく知るには、どこで情報を探せばよいでしょうか?

回答

遺伝子組み換え(GE)作物は、再生可能燃料の原料として使われています。従来、エタノールはスターチ原料(トウモロコシなど)から、そしてバイオディーゼルは植物油原料(ダイズなど)から作られてきました。現在では、セルロース質のバイオマスからエタノールが、真核性微細藻類からバイオディーゼルが作られるようになり、それらは「次世代バイオ燃料」と言われています。また、原核微細藻類が作り出す脂肪酸から新たな燃料を生産しようとする試みにも関心が高まっています([1])。GEトウモロコシには、害虫抵抗性を持つBTタンパク質やグリホサート耐性を付与する酵素が含まれており、米国ではこのトウモロコシを使ってバイオ燃料が生産されてきました。また、2009年に生産されたダイズの20.6%は、バイオディーゼル原料として使用されました[10]。米国では、現在のところ、トウモロコシとダイズ以外のGE作物は、バイオ燃料の原料として使われていません(市場に流通している8種のGE作物のうち)。しかし、植物育種家や遺伝学者たちは、エタノールやバイオディーゼルをもっと低コストで効率良く生産できるよう、何年にもわたり、新たな品種の選抜や改変に取り組んでいます。植物バイオマスの(燃料への)転換効率を改善するには、植物の細胞壁の構造、特にリグニンの含有量や組成を変える必要があります。リグニンは、セルロースを発酵性の糖に転換する際に使われるセルロース分解酵素に、物理的なバリアーとして立ちはだかります[2、3]。 多くの植物種で試験された結果、リグニンの含有量が低下し、その組成が変われば、グルコースの生成が増え、エタノールの生産が最大50%も改善することが分かっています。

バイオ燃料の生産にGE作物を使うことの利点は、食用としてGE作物を活用する場合の利点とほぼ同じです。望ましい形質の選抜が、より迅速かつ的確に行われることで、栽培品種の開発にかかる費用と時間が節約できます。更に、GE作物ですでに明らかになっているように、GE作物を使ったバイオ燃料の生産もまた、農家や消費者、そして環境に、様々な経済的ベネフィットをもたらします。さらに言えば、この分野にかかわる研究やイノベーションは大いに奨励されています。バイオ燃料を、化石燃料由来の可燃物や化学物質に比べ、より競争力のあるものにするために、バイオマス処理での廃棄物(例:リグニン)を使って付加価値製品を作り上げようとする試みも提案されています。例えば、研究者たちは、エタノールの生産で廃棄されるリグニンを、リグニンナノチューブ(LNTs)を作るための一次原料として活用しようとしています。DNAはLNTsに吸収されることが確認されており、同時に、ヒトのHela細胞の細胞核に、カーボンナノチューブよりも低い細胞毒性で、入り込むことが出来るのです。今やLNTsは、遺伝子治療の潜在的手法として、医療分野では非常に注目される存在になっています[9]。

一方、(GE作物を原料としたバイオ燃料生産の)主な欠点の一つは、倫理観の問題で、もし(GE作物を原料としたバイオ燃料生産)が実現可能であり、そして利益性が高ければ、食糧としての作物がバイオ燃料の原料へと流れてしまうことです。その結果、食糧の価格や入手しやすさ、そして食糧安全保障に影響が及ぶことにも繋がりかねません。しかし、再度申し上げますが、この欠点は、GE技術そのものの問題ではなく、食用農作物と比べた場合のバイオ燃料の利益性に起因する問題なのです。

バイオ燃料の分野では、更なる研究が必要です。しかし、この分野は急速に発展している分野でもあります。私が上記で述べた理由から、持続可能なバイオ燃料の生産は、間違いなく、様々なGE技術の実現によって恩恵を受けることになるでしょう。今回私が引用した全ての文献、そして参照文には、更に詳しい情報が載っています。中には非常に専門的なものもありますが、この分野の最新情報をまとめた優れた総説もいくつか含まれています。

もちろん、今回の回答に対しご質問があるようでしたら、いつでも喜んでお答えいたします。

参考文献

  1. Lu X: A perspective: photosynthetic production of fatty acid-based biofuels in genetically engineered cyanobacteria. Biotechnology Advances 2010, 28:742–746.
  2. Himmel ME, Ding S, Johnson DK, Adney WS, Mark R, Brady JW, Foust TD, Ding S: Biomass recalcitrance: engineering plants and enzymes for biofuels production. Scince 2007, 315:804–807.
  3. Visel A, Rubin EM, Pennacchio L a: Genomic views of distant-acting enhancers. Nature 2009, 461:199–205.
  4. Van Acker R, Vanholme R, Storme V, Mortimer JC, Dupree P, Boerjan W: Lignin biosynthesis perturbations affect secondary cell wall composition and saccharification yield in Arabidopsis thaliana. Biotechnology for biofuels 2013, 6:46.
  5. Saballos A, Vermerris W, Rivera L, Ejeta G: Allelic association, chemical characterization and saccharification properties of brown midrib mutants of sorghum (Sorghum bicolor (l.) moench). BioEnergy Research 2008, 1:193–204.
  6. Jung JH, Vermerris W, Gallo M, Fedenko JR, Erickson JE, Altpeter F: Rna interference suppression of lignin biosynthesis increases fermentable sugar yields for biofuel production from field-grown sugarcane. Plant biotechnology journal 2013, 11:709–16.
  7. Xu B, Escamilla-Treviño LL, Sathitsuksanoh N, Shen Z, Shen H, Zhang Y-HP, Dixon R a, Zhao B: Silencing of 4-coumarate:coenzyme a ligase in switchgrass leads to reduced lignin content and improved fermentable sugar yields for biofuel production. The New phytologist 2011, 192:611–25.
  8. Kavousi B, Daudi A, Cook CM, Joseleau J-P, Ruel K, Devoto A, Bolwell GP, Blee KA: Consequences of antisense down-regulation of a lignification-specific peroxidase on leaf and vascular tissue in tobacco lines demonstrating enhanced enzymic saccharification. Phytochemistry 2010, 71:531–42.
  9. Ten E, Ling C, Wang Y, Srivastava A, Dempere LA, Vermerris W: Lignin nanotubes as vehicles for gene delivery into human cells. Biomacromolecules 2014, 15:327–338.
  10. Biodiesel Magazine, (2008), 2009 Biodiesel Industry Directory, Fifth Edition 
回答者 アレハンドラ・アヴリル・ゲバラ

回答者

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アレハンドラ・アヴリル・ゲバラ

Alejandra Abril Guevara

フロリダ大学 大学院生

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