除草剤耐性作物は、ある特定の除草剤をまいても枯れないよう、遺伝子組み換え技術によって作られた作物です。栽培中に特定の除草剤を1~2回散布するだけで、作物に被害を与えることなく雑草だけを枯らすことができるため、農作業の負担を軽減することができます。
農業は、作物の周辺にはびこる雑草との戦いです。農家は通常、雑草や作物の種類に合わせていくつかの除草剤を組み合わせて使用し、肝心の作物には影響を与えないように気をつけています。そこで、そのような除草の手間を軽減するために開発されたのが除草剤耐性作物です。除草剤耐性作物は、ある特定の除草剤をまいても枯れないよう、遺伝子組み換え技術によって作られた作物です。栽培中に特定の除草剤を1~2回散布するだけで、作物に被害を与えることなく雑草だけを枯らすことができるため、農作業の負担を軽減することができます。
1996年から除草剤耐性作物の栽培が進められ、栽培面積は年々増加しています。これは、農家自身が除草剤耐性作物のメリットを実感していることの表れであると言えるでしょう。
除草剤耐性作物として、ダイズやトウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、アルファルファなどが実用化されています。
除草剤耐性作物は、不耕起栽培(耕さない農業)にも有効です。日本人の感覚では、耕さない農業というと不思議な感じがしますが、表土の流失が深刻な問題となっている米国では、耕さない農業が推奨されています。米国では、毎年20億トンという膨大な表土が流出のために失われています。土を耕すと、富み肥えた表土が失われやすくなり、耕地が荒地に変わって、農業面でも環境面でも大きな損害が生じます。そこで耕さない農法への転換が求められますが、耕起は雑草防除の手段としても有効であるため、耕さないと雑草が繁茂してしまうという問題があります。除草剤耐性作物を栽培すると、除草のための耕起は不要です。加えて、耕耘作業やそれに伴うトラクターの燃料を削減でき、より効率的な農業が可能になりました。
これまでに様々な除草剤に対する耐性作物が開発されていますが、ここで例として除草剤グリホサート耐性のメカニズムについてご紹介します。除草剤グリホサートは、植物の生育に必要な芳香族アミノ酸の生合成経路に関わる酵素5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)と特異的に結合して、その活性を阻害します。そのため、グリホサートを浴びた植物は必要なアミノ酸を合成できなくなり、枯死します。そこで、この酵素と同様の働きを持ちながらグリホサートの影響を受けないように改変した酵素を作る遺伝子を作物に組み込みます。すると、この作物はグリホサートをまいてもその影響を受けることなく育ち、雑草だけが枯れます。
»メリットとデメリット