これまで20年以上、遺伝子組み換え (GM) 作物は食品や飼料として利用されており、健康に悪影響を与えたと確認された事例は1例もありません。厳しい安全性審査を経た製品のみが流通しており、その安全性は世界中の専門家により担保されています。
遺伝子組み換え食品の安全性は、科学者に圧倒的に支持されています
1996年に商業栽培が開始されて以来、GM作物は20年以上世界中で利用されています。その間、GM作物の安全性、特に人や動物が食品や飼料として利用した場合の影響について、700以上の独立した研究や根拠に基づくレビューが報告されてきました1。そして、これらの研究報告をもとに、これまでに数多くの公的な組織や科学団体が、「GM作物は従来の作物と同様に安全であり、健康に影響を及ぼすことはない」と結論づけています。これらの報告の一部を下記にご紹介いたします。
世界保健機関 (WHO) 2
「GM食品が承認された国々で、多くの人々がそれらの食品を消費してきた結果は、GM食品が人の健康に影響が無いことを示している」
米国科学・技術・医学アカデミー3
「GM食品の消費と、がん、肥満、糖尿病、自閉症、食品アレルギーなど特定の健康問題の発生率との因果関係は認められない」
「GM作物を長期間飼料として摂取した家畜への健康被害は認められない」
「GM作物が、従来の作物と比較してより健康リスクが高いことを示唆するような差異は無い」
欧州委員会 (EC) 4
「25年以上にわたって500以上のグループが関与した130以上の研究プロジェクトが導き出した主要な結論は、バイオテクノロジーそれ自体、とりわけGMOが、従来の植物育種技術よりもリスクが大きいわけではないということだ」
ノーベル賞受賞者らからもGMOの安全性は支持されています。2016年6月、ノーベル賞受賞者らが連名でGM作物の利用推進を訴える書簡を公表しました5。この書簡の中で、受賞者らはGM作物の安全性について次のように言及しています。
「世界の学術団体および規制機関は繰り返し行われた試験研究を通じ、バイオテクノロジーにより改良された農作物および食品は、それ以外の農法により生産された農作物および食品と比べ、それ以上とは言わないまでも等しく安全であるとの結果を常に得てきた。バイオテクノロジーによる食品が人および家畜の健康に有害であると確証のとれた結果はこれまで一例も報告されていない。また、それらの環境に対する影響は従来農法に比べ小さく、生物多様性を保護するものであることが繰り返し明らかにされてきた。」
なお、この書簡には1年を経過した2017年6月までに123名のノーベル賞受賞者が署名しており、これは存命のノーベル賞受賞者総数の3分の1以上に相当します。GM作物の利用を阻む反対運動を「人道に対する罪」という言葉で断罪するなど、ポスト・トゥルースや反科学が世論形成に一定の影響を与える傾向に警鐘を鳴らす、高名な科学者たちの強い決意が表明されています。日本語版もありますので一読をお勧めいたします。
厳しい安全性審査をクリアした製品のみが流通しています
GM食品の安全性については、OECDやコーデックス委員会 (WHOと国連食糧農業機関FAOの合同プログラム) などの国際機関がガイドラインや国際基準を定めており、各国の食品基準はこの国際基準に則して設定されています。商品化を目指すGM食品は、各国政府によって定められた基準に従って、前もって安全性の確認が行われています。
ここで、簡単にこの「安全性審査」の一部についてご説明いたします。基本となる考え方は、「実質的同等性Substantial equivalence」、つまり「これまで食べてきた経験のある作物や食品を基準にして、GM作物の安全性を評価する」という概念です。ここを出発点として、毒性物質が生じる可能性、アレルギー誘発性の可能性、栄養素や有害物質の含有量の変化などを、対照作物とGM作物とで比較します。ここで重要なポイントですが、比較にあたっては、遺伝子組み換えによる「意図的な影響」はもちろん、付随する「非意図的な影響」も総じて検討材料に含まれています。専門家によるこうした厳格な審査を経て、従来作物と安全性において「実質的に同等である」と認められたGM作物のみが、私たちの食卓に上ることになります。
当然と言いますか意外と言いますか、他の育種技術で生み出された新品種には、このような厳しい審査は不要です。例えば、ライ小麦はライ麦と小麦という異種間の人工交配により産み出されました。ライ麦と小麦は染色体の数が異なるため自然には交配しませんが、コルヒチンという化学物質を用いた染色体倍化技術により、文字通り「人工的に」雑種化されました6。また、果肉が赤いグレープフルーツの一種リオレッドやスタールビーは、放射線照射による突然変異誘導により作り出されました。これらはいずれも自然には起こりえない人為的な遺伝子改変の結果産み出されたものですが、安全性審査は不要です。数ある作物の中で、GM作物はいわば「最も厳しい安全性審査をクリアした品種」と言えるでしょう。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24041244 2http://www.who.int/foodsafety/areas_work/food-technology/faq-genetically-modified-food/en/ 3The National Academies of Sciences Engineering Medicine (2016). Genetically Engineered Crops: Experiences and Prospects. The National Academies Press.
https://www.nationalacademies.org/news/2016/05/genetically-engineered-crops-experiences-and-prospects-new-report、日本語版 4European Commission (2010). A decade of EU-funded GMO research (2001-2010).
https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/d1be9ff9-f3fa-4f3c-86a5-beb0882e0e65 5http://supportprecisionagriculture.org/nobel-laureate-gmo-letter_rjr.html 6ニーナ・フェドロフ、ナンシー・マリー・ブラウン (2013). 食卓のメンデル 科学者が考える遺伝子組み換え食品. 日本評論社.