日本では、トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタなどの主要作物は海外からの輸入に大きく依存しており、その大部分が遺伝子組み換え品種と推定されています。国内では食用油やデンプン、家畜の飼料として利用されており、私たちの食に欠かせないものとなっています。
輸入の状況
日本には毎年多くの遺伝子組み換え(GM)作物が輸入されています。日本における自給率は、トウモロコシ、ワタおよびナタネでは0%、ダイズでは6%となっており、国内需要を海外からの輸入により賄っています。日本への主要輸出国では、これらの作物にGM品種が高い割合で使用されています。ここから計算すれば、日本に輸入されるこれらの農産物の8割程度がGM品種であると推測されます。日本人が1年間に消費するGM作物の量は、コメの年間消費量(約820万トン1)の2倍以上に相当します。
作物 | 日本への主要な輸出国 ※カッコ内は各国の 2021年GM作付比率 |
作物の総輸入量 (単位:千トン) |
うち組み換え作物の 推定輸入量※ (単位:千トン) |
組み換え作物 推定輸入比率※ |
---|---|---|---|---|
トウモロコシ (自給率0%) |
米国(93%)、 ブラジル(88%)、 アルゼンチン(98%) |
15,271 | 13,271 | 87% |
ダイズ (自給率6%) |
米国(95%)、 ブラジル(98%)、 カナダ(80%) |
3,503 | 3,279 | 94% |
ナタネ(採油用) | カナダ(95%)、 オーストラリア(22%) |
2,101 | 1,373 | 65% |
ワタ(採油用) | オーストラリア(99%)、 米国(97%)、 ギリシャ(0%) |
107 | 88 | 83% |
合計 | 20,982 | 18,012 | 86% |
消費の状況
2024年3月現在、日本で食品として安全性が確認され使用が認められているGM作物は、9種類334品種あり、様々な形質が付与されています。1996年以来、毎年多くのGM作物が日本へ輸入されています。食品としてGM作物が多く使われているのは、コーン油、ダイズ油、ナタネ油、綿実油などの食用油、コーンスターチ、コーンシロップなどです。また、GM作物は家畜の飼料としても多く使われています。
トウモロコシ
品種:211種類 特徴:害虫抵抗性、除草剤耐性、高リシン形質、乾燥耐性、耐熱性α-アミラーゼ産生、生産性向上など |
ダイズ
品種:29種類 特徴:除草剤耐性、害虫抵抗性、高オレイン酸形質、ステアリドン酸産生など |
ナタネ
品種:24種類 特徴:除草剤耐性、雄性不稔性、稔性回復性、DHA産生、EPA産生 |
ワタ
品種:48種類 特徴:害虫抵抗性、除草剤耐性 |
テンサイ
品種:3種類 特徴:除草剤耐性 |
ジャガイモ
品種:12種類 特徴:害虫抵抗性、ウイルス抵抗性、疫病抵抗性、アクリルアミド産生低減、打撲黒斑低減 |
アルファルファ
品種:5種類 特徴:除草剤耐性、低リグニン |
パパイヤ
品種:1種類 特徴:ウイルス抵抗性 |
カラシナ
品種:1種類 特徴:除草剤耐性・稔性回復性 ※カラシナはセイヨウナタネの近縁種である。 |
経済的貢献
日本はGM作物の栽培国ではないものの、年間数千万トンのGM作物を輸入する輸入消費大国です。しかし、その実態はあまり知られておらず、安全性やその必要性について国民の理解も十分得られていません。遺伝子組み換え作物の栽培による経済的インパクトに関する研究論文は少なくありませんが、輸入による日本経済へのインパクトに関する論文はほとんど見当たりません。その実態を探るべく、輸入国としての日本から見たGM作物の経済的インパクトについて、東京大学大学院農学生命科学研究科農業・資源経済学専攻経済学研究室の本間正義教授・齋藤勝宏准教授のチーム(所属・肩書は当時のもの)が当会の資金援助のもと調査を実施し、2016年10月23日に環太平洋産業連関分析学会で発表しました。
報告書によれば、日本に輸入されるGMダイズおよびGMトウモロコシにより、1兆8,000億~4兆4,000億円のGDPが生み出されています。これは、日本のGDPの約0.93%に相当します。所得に換算すると、1世帯当たり年間約25,000~60,000円の所得増加に貢献しています。これらの経済的貢献度は、同一モデルで算出したコメ産業の約3分の2の規模に相当します。日本ではGM作物としてワタやナタネも利用されていますので、これらを算入するとGM作物の潜在的な経済的貢献額はより大きなものになるでしょう。
報告書ではさらに、仮にGMダイズおよびGMトウモロコシの輸入を停止した場合の影響を調査しています。代替品の調達がなければ、国産トウモロコシの価格は約 2.5 倍、国産ダイズは約 1.9 倍、国産の鶏肉、卵は約 2倍、国産動植物油脂は約 1.9 倍に上昇し、結果として実質 GDP を約 0.61%押し下げると試算されています。もちろん、現実には代替品の調達によりこのような結果になる恐れは低いと思いますので、あくまで私たちの日常生活への浸透度としてご参考にして頂ければと思います。
- 研究報告書(PDF)
- 「遺伝子組み換え作物の社会的便益の評価に関する研究」
遺伝子組み換え作物の日本経済への貢献度の計測
https://cbijapan.com/wp-content/themes/cbijapan/pdf/2017031401CBIJ.pdf - プレスリリース本文(PDF)
- https://cbijapan.com/wp-content/themes/cbijapan/pdf/2017031402.pdf
- 調査結果に関するお問い合わせ
- 東京大学大学院 農業・資源経済学専攻経済学研究室 教授 齋藤勝宏
asaito●mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
(●を@に変更してメールを送信してください。)