よくある質問 - 検証編

質問

「遺伝子組み換えトウモロコシを2年間ラットに与えたところ、乳がんや脳下垂体異常、肝障害を発症した」という論文が発表されたと聞きましたが、本当に大丈夫ですか。

回答

結論

フランスのカーン大学教授・セラリーニ氏らの研究グループによる論文「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize(ラウンドアップ除草剤並びにラウンドアップ耐性遺伝子組み換えトウモロコシの長期毒性)」(*1)は、発表されるとすぐに、多くの研究者や世界専門機関から反論の声があがりました。(*2)
欧州食品安全機関(EFSA)や日本の食品安全委員会は、この論文に示された試験設計や結果の分析には明らかに不備があり、セラリーニ氏らが導いた結論はデータによる裏付けがないとの見解を発表しています。(*3)(*4)
また、この論文を掲載した学術誌は、再検討の結果、論文の結論は不完全であり、同誌に掲載する論文の水準に達していなかったとして、この論文を取り下げました。

発端

2012年9月19日、フランスのカーン大学教授・セラリーニ氏ら研究グループがFood and Chemical Toxicology誌電子版に、「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize(ラウンドアップ除草剤並びにラウンドアップ耐性遺伝子組み換えトウモロコシの長期毒性)」と題した論文を発表しました。この論文は、ラウンドアップ除草剤とそのラウンドアップに耐性を持つ遺伝子組み換えトウモロコシ(NK603)を2年間にわたりラットに与えたところ、乳がんや脳下垂体異常、肝障害、腎症などを発症したという試験結果をまとめたもので、大きな腫瘍が発生したラットの写真とともに一部メディアでセンセーショナルに報道されました。

検証

セラリーニ氏らの論文に対し、欧州食品安全機関(EFSA)は国際的に認められた試験方法や報告書様式のガイドラインに沿って検証を行い、次のような問題点を指摘しました。

試験に使われたラットの種類と数が適切ではない

発がん性研究の試験では、1グループあたり最低でも雌雄各50匹のラットを必要とすることが国際機関で定められていますが、セラリーニ教授らは1グループあたり雌雄各10匹しか使用しませんでした。実験中に発生する自然死を考慮すると、何らかの結論を導き出すためには、その動物数はあまりに少ないものでした。
また、2年間にわたるこの試験に使用されたラットは、その2年の平均寿命の間に腫瘍が発生しやすい系統のものでした。論文中に写真は示されてはいませんが、遺伝子組み換えトウモロコシでない餌を与えたラットであっても、乳がんの発生や死亡例が多く認められています。よって、実験途中で認められたがんの発生や死亡の原因が遺伝子組み換えトウモロコシを与えた影響によるものなのか、それとも偶然によるものなのかを見分けることはできません。

比較に必要なグループ数を満たしていない

この実験では、市販の餌に遺伝子組み換えトウモロコシをそれぞれ11%、22%、33%混ぜたラットのグループがあるのに対し、非遺伝子組み換えトウモロコシを与えたグループ(対照群)は1つだけでした(33%の非遺伝子組み換えトウモロコシを餌に混ぜて与えた)。遺伝子組み換えトウモロコシを与えた場合と、従来のトウモロコシを与えた場合の影響を比較するには、適切なグループ数ではありません。

試験手法の数々の不備が見られ、必要なデータが論文に記載されていない

他にも、次のような問題点が指摘されています。

  • 実験の目的が述べられていない。
  • 経済協力開発機構(OECD)などが国際的に定めている実験プロトコルに従っていない。
  • ラットが摂取した餌や水の量が明示されていない。
  • 腫瘍のデータなどは報告されているものの、測定された情報すべてが報告されているわけではない。

欧州食品安全機関(EFSA)は、2012年11月28日に発表したこの論文に対する最終評価において、論文に示された試験設計や報告、試験結果の分析には明らかに不備があり、セラリーニ氏らの導いた結論はデータによる裏付けがないと断じるとともに、 これまでEFSAが行ってきた遺伝子組み換えトウモロコシ(NK603)の安全性評価を見直す必要性がないとの見解も表明しました。

 

参照

(*1) Gilles-Eric Séraliniら「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize」(Food and Chemical Toxicology2012)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278691512005637
(*2)Seralini氏の論文が発表されて以来、メディアに寄せられた科学者・専門家のコメント一覧(EuropaBioによるまとめ)
英語:PDF
日本語:バイテク情報普及会による暫定訳・PDF)
(*3)欧州食品安全機関(EFSA) 2012年11月28日プレスリリース(Seralini氏の論文に対する最終評価)
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/121128
日本語:バイテク情報普及会による暫定訳・PDF)
(*4)食品安全委員会 平成24年11月12日 除草剤グリホサート耐性トウモロコシNK603系統の毒性発現に関する論文に対する見解
https://www.fsc.go.jp/senmon/idensi/gm_nk603_kenkai.pdf

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