よくある質問 - 検証編

質問

「遺伝子組み換えジャガイモをラットに食べさせる実験を行ったところ、免疫力が低下した」というのは本当ですか。

回答

結論

この実験で使用されたジャガイモは、他の植物種であるマツユキソウのレクチンを産生する遺伝子を導入した研究用の特殊なジャガイモで、商品化されたものではありません。また、この実験を行ったパズタイ博士の報告を受けて、博士の所属していた英国のロウェット研究所や、英国新規食品・加工諮問委員会(Advisory Committee on Novel Foods and Processes:ACNFP)が、実験結果の検証を行った結果、博士の実験そのものや使用されたジャガイモに問題があったことが明らかとなり、ラットの免疫力が低下したと結論付けることはできないと報告しています。なお、このジャガイモの研究は中止されましたので、市場に出回ることはありません。
遺伝子組み換え食品が一般に販売される際には、必ず安全性が確認されたうえで市場に流通することになっているため、このような研究段階のジャガイモが消費者の口に入ることはありません。

発端

1998年、英国ロウェット研究所のパズダイ博士が「レクチン遺伝子を導入した組換えジャガイモをラットに食べさせる実験を行ったところ、ラットに免疫力の低下がみられた(*1)」とテレビ番組において発言しました。
さらにその翌年には、アバディーン大学のイーウェン博士(パズタイ博士の共同研究者)が、同様の遺伝子組み換えジャガイモをラットに食べさせる実験を行ったところ、ラットの胃の内壁や小腸などに異常が見られたとランセット誌に発表(*2)しました。
これらの発表は日本を含む各国で、メディアなどを通じて紹介され、「遺伝子組み換えジャガイモを食べると、免疫力が落ちるのではないか」と、一部の消費者の間で不安の声があがりました。

検証

パズタイ博士・イーウェン博士の実験方法には問題があり、科学的に正しい評価は下せません。

パズタイ博士の実験は、まず、遺伝子組み換えによってマツユキソウ由来の「レクチン」を産生する遺伝子を導入した実験用のジャガイモを作り、そのジャガイモを5匹のラットに110日間食べさせたところ、ラットに軽度の発育不全と免疫力の低下が見られたという内容でした。しかし、パズタイ博士の所属していたロウェット研究所がパズタイ博士の提出した報告書を検証した結果、この実験には以下の点で問題があり、このジャガイモを食べたことが原因であると結論付けることは出来ないとされています。(*1)

  • ラットに与えた飼料中のタンパク質量が少なく、飼料の栄養バランスが悪いため、ラットの健康上の問題がある。
  • 実験で用いたレクチン遺伝子組み換えジャガイモは、対照実験で用いた非組換えジャガイモとは品種が異なっているので、科学的に正確な比較ができない。
  • ラットに生のジャガイモを食べさせた結果と、加熱して食べさせた結果を同じように評価するなど、結果分析に一貫性がない。

研究所では、本研究発表は研究途中の段階で行われたものであり、遺伝子組み換え作物の安全性に対する誤解を招いたとして、彼を停職処分としました。
また、パズタイ博士の共同研究者のイーウェン博士は、同様の実験によってレクチン遺伝子組み換えジャガイモを10日間ラットに与えたところ、ラットの胃や小腸に異常が見られたという実験結果(*2)(*3)をランセット誌に発表しました。しかし、この研究結果については、博士自身が実験の設計や統計分析については不十分な点が多いと認めており、免疫力の低下が、遺伝子組み換えジャガイモが原因かどうかは特定できないとしています。

英国食品基準庁も、二人の実験結果を否定しています。

さらに英国食品基準局(Food Standards Agency:FSA)の新規食品・加工諮問委員会(Advisory Committee on Novel Foods and Processes:ACNFP)が、パズタイ博士とイーウェン博士の実験について検証を行った結果、最終的に、「彼らの実験設計とデータからは、このレクチン遺伝子組み換えジャガイモがラットの免疫力を低下させるという結論は導き出せない」(*4)と分析しています。日本の厚生労働省も、この問題についてHPで解説を行っていますが、「ラットに発育不良が見られ、また免疫系の抑制がみられたとしているが、この結論は不正確な論拠に基づく。」というロウェット研究所の見解を紹介しています。(*5)

このジャガイモは実験用につくられたジャガイモで、商品化されたものではありません。

この実験に使用されたレクチン遺伝子組み換えジャガイモは、博士が実験用につくったもので、食品としての安全性が確認されて、市販されたものではありません。また遺伝子組み換え食品が一般に販売される際には、必ず安全性が確認されたうえで市場に流通することになっているため、このような研究段階のジャガイモが消費者の口に入ることはありません。(*6)(*7)(*8)

参照

(*1)SOAEFD flexible Fund Project RO 818, Report of Project Coordinator on data produced at the Rowett Research Institute (RRI), ARPAD PUSZTAI, FRSE, 22nd October, 1998

(*2)R. Horton et al. (1999) Genetically modified foods: “absurd” concern of welcome dialogue?, The Lancet, 354(9187): 1314-1315
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(99)00340-2/abstract

(*3)S.WB. Ewen et al. (1999) Effect of diets containing genetically modified potatoes expressing Galanthus nivalis lectin on rat small intestine, The Lancet, 354(9187): 1353-1355
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(98)05860-7/abstract

(*4)英国食品基準庁「新規食品と製造工程に関する諮問委員会(ACNFP)」“Statement of the studies conducted at the Rowett Research Institute of potatoes genetically modified to produce the snowdrop lectin”
http://acnfp.food.gov.uk/committee/acnfp/acnfppapers/gmissues/rowettgmpot/acnfpstatementrowett?

(*5)厚生労働省医薬食品局食品安全部 「遺伝子組み換え食品Q&A」英国で遺伝子組み換えのジャガイモをラットに食べさせたところ、免疫力の低下が見られたという報告(パズタイ博士の報告)があったそうですが、本当ですか。http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/qa/qa.html#D?9?

(*6)日野明寛(1999) 「ぜひ知っておきたい遺伝子組み換え農作物」 幸書房

(*7)山田康之、佐野浩ほか(1999)「遺伝子組み換え植物の光と影」 学会出版センター

(*8)責任編集大沢勝次ほか(2000)「遺伝子組み換え食品」 学会出版センター

●もっと詳しく(外部サイト)
ILSI Japan バイオテクノロジー研究部会:「遺伝子組み換え作物を理解する?」(9-10ページ)
「ロウェット研究所の Pusztai がレクチンを含む遺伝子組み換えジャガイモをラットに食べさせる実験を行ったところ、免疫力が低下した(1998)」との指摘について
http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/COM/Bio2010/rikaisuru2-2.pdf

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