よくある質問 - 検証編

質問

更新日:2022年11月28日

「遺伝子組み換えダイズが含まれるハンバーガーを食べたヒトの腸内細菌から除草剤耐性菌が検出された」と聞きましたが、本当に食べ続けても大丈夫なのでしょうか。

回答

ニューカッスル大学が英国食品基準庁 (FSA) からの委託により実施した2004年の研究1において、遺伝子組み換えダイズを含むハンバーガーからヒトの腸内細菌へ遺伝子が移行する可能性について検証されています。この研究の結論は、「遺伝子組み換えダイズからの遺伝子の移行は認められなかった」というものでした。

この研究では、回腸ストーマを造設している (大腸と肛門が切除され、消化物は腹部に増設されたストーマからストーマ袋へ排泄される) オストメイトのボランティア7人及び、健常な消化管をもつボランティア12人を対象に、遺伝子組み換えダイズを成分として含むハンバーガーとミルクシェイクを摂取した際の、排泄物中のDNAを分析しました。この遺伝子組み換えダイズには除草剤耐性遺伝子が組み込まれており、もしこの除草剤耐性遺伝子が腸内細菌へ移行したとすれば、排泄物中のDNAからも検出されることになります。分析の結果、ストーマ袋中の排泄物 (すなわち、小腸を通過した段階の排泄物) からは僅かな量の除草剤耐性遺伝子が検出されましたが、健常者の糞便からは一切検出されませんでした。つまり、食物中の遺伝子は、小腸通過後は残っていることがありますが、大腸を経ることで完全に分解されることを示しています。

一部のオストメイトボランティアのストーマ袋菌叢から微量の除草剤耐性遺伝子が検出されましたが、これはこの実験により移行したものではなく、以前からストーマ袋という特殊な環境に存在していたものでした。なお、この研究ではさらに細菌の遺伝子がヒトの腸管上皮細胞へ移行するかどうかも培養細胞を用いて検証しており、移行しないことを確認しています。

以上の結果を踏まえ、研究チームは、「この実験において、遺伝子組み換えダイズから腸内細菌もしくは腸管上皮細胞への遺伝子の移行は認められなかった」と結論しました。

日本でも、食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会が、組み込んだ遺伝子の腸内細菌への移行などに関して「現時点では摂取されるDNA量、その消化性を考慮すると、組換え植物から腸内細菌あるいは哺乳類への遺伝子伝播が起こる確率はきわめて低く、安全性上の問題にならないと考え、評価項目にはしていない」とコメントしています2

2016年には、米国科学・技術・医学アカデミーが「遺伝子組み換え食品由来の遺伝子がヒトの腸内細菌や体細胞へ移行することを実験的に示した例はない」と報告しています3。さらに、同アカデミーは「植物から動物へ遺伝子の水平伝播が起こるための必要過程への理解や、遺伝子組み換え作物に関するデータに基づけば、遺伝子組み換え作物もしくは従来作物からヒトへの遺伝子の水平伝播は、実質的な健康リスクをもたらさない」と結論付けています。

1 Netherwood, T., Martín-Orúe, S., O’Donnell, A. et al. Assessing the survival of transgenic plant DNA in the human gastrointestinal tract. Nat Biotechnol 22, 204–209 (2004).

2 「遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準」案についての御意見・情報の募集結果について(専門調査会回答)

3 The National Academies of Sciences Engineering Medicine (2016). Genetically Engineered Crops: Experiences and Prospects. The National Academies Press. (日本語版要旨)

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